「働いて、収入を得て、生活する」そんな当たり前の日常が、思いがけない病気やケガで崩れてしまうことがあります。
会社員や公務員の方が傷病によって収入が途切れてしまった時に頼れるのが、公的な医療保険制度のひとつでもある傷病手当金です。
今回は、病気やケガで働けなくなった時に自身と家族の生活を守る傷病手当金についてご紹介します。
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目次
病気で働けない!収入が途切れてしまう危険
ある日突然、病気やケガでこれまでどおり働けなくなる危険は、誰にでもつきまといます。
収入がいきなり途切れることを普段は想定していないかもしれませんが、
でもあるのです。
近年は、民間の保険会社から登場している、病気やケガの療養で働けなくなった時のための収入保障保険が注目を集めているので、収入保障に関心を持っている方も多いでしょう。
しかし、家計の中で固定費でもある保険料を節約する人が多いなかで、収入保障保険まで契約している人は医療保険ほど多くはありません。
傷病手当金は公的医療保険のメリットのひとつ
傷病手当金とは、病気やケガの治療や療養で働けなくなった時に所定の手当金が支給される公的医療保険です。
被保険者本人とその家族の生活を守るために設けられており、公的な医療保険制度のメリットのひとつです。
傷病手当金の支給申請の条件
傷病手当金の支給には条件があり、次のすべての条件を満たしていることが申請基準です。
(2) 「待機期間」となる連続3日間を含み4日以上就業できなかったこと
(3) 休んでいる間に給与の支払いがないこと
(4) 療養を要する病気やケガが労災保険適用外であること
傷病手当金を申請する場合には、加入している公的医療保険の窓口から申請書を取り寄せます。
申請書には、本人、会社、医師それぞれが記入する必要があります。
事前に会社や担当医師に申請希望であることを伝えておくと、申請書の準備がスムーズになります。
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傷病手当金の支給額
気になる傷病手当金の金額ですが、過去12か月の給与をベースにした日給の2/3が支給額です。
これまでの月収の約6割が支給されると考えておくとよいでしょう。
(支給開始前の過去12か月の各月の標準報酬月額を平均した額)÷ 30日 × 2/3 = 傷病手当金
ただし、傷病手当金は申請すれば必ず全額受け取れるわけではありません。
以下の場合は、全額不支給もしくは一部支給となるので、申請前に一度確認をしておきましょう。
(2) 老齢年金を受給している
(3) 出産手当金を受けている
また、公的医療保険であっても、国民健康保険には傷病手当金の制度はありません。
国民健康保険に加入している自営業やフリーランスの方は、貯蓄や保険会社の収入保障保険などで働けなくなった時の備えをしっかりしておきましょう。
傷病手当金の支給期間
傷病手当金を受給できる期間は、
です。
・一度は復帰したが同じ傷病で再度働けなくなった場合には、支給開始から起算して1年6か月分
です。
一度復帰した時に給与が支払われた期間分は傷病手当金が支給されません。
また、傷病手当金は、支給対象期間内であれば退職した後も申請・受給できます。
会社を辞めても「収入がない!」という精神的な負担が軽減されるので、安心して療養できます。
傷病手当金の申請は、申請書を提出した日から2年前までさかのぼることもできます。
もし療養中に傷病手当金の申請ができなかったとしても、申請日から2年前以内であれば傷病手当金を申請できます。
傷病手当で経済的不安を最小限に療養に専念
病気を発症した時、ケガを負った時にはショックで精神的に余裕はありません。
しかし、傷病手当金の制度を知っていれば、「収入がいきなり途切れてしまう」という精神的なストレスを軽減できます。
筆者も過去に傷病手当金を受給した経験がありますが、「収入がなくなる!どうしよう…」という不安が解消されて、傷病手当金を受け取っている間しっかりと療養に専念できました。
傷病手当金の支給は、働く人にとって万が一のとき頼りになる制度です。
働けない間の経済的な不安を最小限にしておくだけで、心身の回復は大きく変わってきます。
病気やケガで休職や退職をした時には、忘れずに傷病手当金を申請しましょう。(執筆者:花見 結衣)