暮らしに欠かせないお金として、自動車を維持するための費用があります。
乗用車の世帯保有率は、緩やかな減少傾向がみられるものの、最新の調査結果では、2017年時点で76.8%となっています。
通勤・通学、買い物、送り迎えなどで自動車が不可欠な地域も多いものです。
しかし、自動車は、購入にかかるお金はもちろんのこと、その後の維持費が家計の大きな負担となるものです。
家計調査で、2000年以降の二人以上の世帯における「自動車維持費」の推移を見てみると、年々上下しながらも年平均1.5%ほどで上昇を続けています。
そして、2019年に入り、ついに月1万7,000円台に到達しました。
目次
上昇がひと段落したガソリン価格

自動車維持費の中でもウェートが大きいのがガソリン代です。
2000年代に入り、ガソリン価格は大きく上昇を始めました。
途中、リーマンショックがあった2008年や、米国で「シェール革命(技術進化によるシェールオイル生産量の増加)」が進んだ2014年・2015年に、ガソリン価格は一時的に大きく下がりました。
しかし長期的にみると、ガソリン価格は上昇傾向が続いています。
小売物価統計調査で見てみると、2016年3月のリッター109円を底値に、2018年10月にはリッター157円まで約1.4倍の上昇が起きました(東京都区部)。
それ以降2019年7月まで、直近のガソリン価格はリッター139円~145円のレンジで揉み合いながら不安定な動きを示しており、今後が見通しにくい状況となっています。
揉み合いが続く原油価格
このようなガソリン価格の動きのベースとなっているのが、ガソリンのもととなる原油の価格です。
原油価格は需要と供給によって決定されるものですが、世界各国の思惑や利害が絡み合い非常に複雑に動いています。
一般に、産油国における減産合意や産油国に対する禁輸措置などによって供給が減ったり、世界経済が順調に成長して需要が増えたりすれば価格は上がります。
一方、産油国が減産解除をしたりシェールオイルの生産量が拡大するなどして供給が増えたり、貿易戦争の激化等によって世界経済が減速したり、また、地球環境保全の観点から化石燃料の利用を抑制しようという動きが強まれば需要は減って価格は下がります。
2019年に入り、こうした動きの揉み合い(押し引き)が強まっており、原油価格は不安定に上下動しながら一定の水準で横ばい始めている、という状況にあるのです。
普及が進まない次世代自動車
ガソリン価格は高水準にあり、今後の展望も見通しにくい状況ですが、一方で、低燃費・低排出ガスを謳う次世代自動車の普及はなかなか進んでいません。
日本では、乗用の新車販売台数の約1/3を占めるほどの人気を誇る「軽自動車」が、ほぼすべてレギュラーガソリンを燃料としています。
このこともあり、「エコカー(HV/PHV/EV/FCV)」とディーゼルの合計販売台数が新車販売台数に占める割合は1/3弱にとどまっています。
次世代自動車の普及が進まない背景には、充電設備の普及がまだまだ十分に進んでいないといったインフラ面の課題もありますが、何よりも、家計を考えた時に、比較的高価な次世代自動車を購入することに躊躇してしまう人が多い、というのが実情ではないでしょうか。
原油と日本経済の未来
しかしながら、家計における節約の観点ももちろんのこと、地球環境保護の観点、なにより日本経済全体への影響も意識しつつ、省エネ・低排出ガスを意識した自動車選びを進めていくことは極めて重要です。
原油の輸入に強く依存した経済は、世界情勢が大きく変化した時に極めて不安定な状況に転じてしまいます。
原油価格に多大な影響を受ける日本の経済

日本は原油のほぼすべてを輸入で賄っており、急激に原油価格が上昇した場合に大きな影響を受けることになります。
日本の2018年の貿易収支は、貿易統計ベースでマイナス約1.2兆円となり、3年ぶりに赤字となりました。
日本の年間輸入額総額82.7兆円のうち最も大きい品目である「鉱物性燃料」の輸入額が19.3兆円(そのうち11兆円が「原粗油+石油製品」)となり、前年比21.8%の増加となりました。
これが貿易赤字の大きな要因となったのです。
原油価格が上昇すれば、為替の動向にもよりますが、輸入数量が変わらなくとも輸入金額は増えることになります。
これが、ゆくゆく、日本の国際収支における大きなマイナス要因となり、日本経済全体の成長を減速させ、巡り巡って家計に悪影響が及んでいく可能性があります。
駐車場代も上昇する昨今、カーライフの見直しが課題
ガソリン代だけでなく駐車場代がじわじわ上がっていることも見逃せません。
小売物価統計調査を見ると、東京都区部における1時間あたり駐車料金は2014年7月時点では564円でした。
これが、2019年7月時点では616円となっており、5年間で約10%値上がりとなっています。
日本経済の将来を長期的に見つめながら、公共交通機関やカーシェアリングサービスの積極活用を進めていくなど、カーライフについて多面的に見直しを図っていくことが重要でしょう。(執筆者:独旦寺 悠々)