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原油価格と日経平均株価との関係

今年9月14日未明、サウジアラビアの石油施設が攻撃を受け、世界の原油供給量5%に当たる生産が停止したと言われています。
これを受け、原油価格は前週比約15%急上昇しさらなる波乱が予想されましたが、現在は事件前の水準まで落ち着きました。
原油の約90%を中東に依存している日本にとって他人ごとではない一大事なのですが、日経平均株価は事件後も上昇を続けています。
では原油価格はどこまで上がるのでしょうか。
またそれを受けた日経平均株価への影響はどうなるのかを、過去の値動きから考えてみます。
戦後1950年代から日本のエネルギー源は石油の時代へ移行し、2度のオイルショックをへて今もエネルギーの主役であることに変わりありません。
その石油を取り巻く環境を知り、今後の日本株式相場に及ぼす影響を検証しましょう。
原油、石油、ガソリンの違いとは
まずは言葉の意味を確認しておきましょう。
「原油」とは地中から採掘された状態
「ガソリン」とは原油から精製された物質
※原油から精製される物質は、他に軽油・灯油・重油・ナフサなどがあります。
ここでは相場にかかる時には「原油」、施設や製品の総称に「石油」と呼んで解説していきます。
原油価格の3大指標とは
原油の取引は、世界3大指標の価格を元に売買されています。
「ニューヨーク/WTI原油」:アメリカ国内から採掘される軽油質原油で、ガソリンや石油製品の製造に適している。現在の原油価格で一番影響力をもっている指標
「中東/ドバイ原油」:重質で硫黄分が多いドバイ原油は、アジアでの取引価格の参考となる
原油価格は1バレルという単位で米ドル建価格となっています。
1バレル=約159リットル、ドラム缶約0.8本分です。
これ以降は、原油価格と言えばWTI原油を指すこととします。
原油価格の過去推移を見る

WTIは1982年から取引が始まり、大きく4つの波がありました。
(2) 2003年-2008年(戦争による上昇期):イラク戦争から原油価格が上昇、2008年7月には147ドルに達した
(3) 2009年-2014年(乱高下期):リーマンショックに端を発した景気後退に伴い、30ドル台へ急落。その後2011年には100ドルを越える時期が続いた。
(4) 2015年-現在(安定期):アメリカのシェールオイルが量産化され、イランへの経済制裁解除など供給過剰となり価格は下落。ロシア産原油など中東に頼らない産地の多様化が実現し、脱ガソリン車の動きもあり価格も低位安定するようになった
世界景気が低迷すると原油価格は下落し、景気拡大期や中東和平が崩れるような戦乱があると、通常ラインを越えて上下動します。
9/25現在、WTI原油は1バレル56米ドル。
今後の原油需要が大幅に伸びないことを踏まえ、平時の価格イメージを大ざっぱに現すと、平均50米ドルの上下20米ドル以内。
有事と思われる上限価格の70米ドルを越える局面では戦乱がある時や、原油価格上昇が原因で景気停滞期に突入することが知られています。
また30米ドルを切る局面では景気低迷期に入っているか、需要と供給のバランスが崩れ供給過多になっています。
日経平均株価への悪影響は「1バレル=70米ドル」から
リーマンショック後の2010年以降だけを見ると、「1バレル=70米ドル」を越える局面では日経平均株価が下落する悪影響が見られます。
直近で70米ドルに達した2018年の相関関係は、次の通りです。
(2) 6月には70米ドルを超え10月まで維持すると、その間の株価は2万2,000円前後で横ばい
(3) 10月末に2万4,000円を越える年初来高値を付けたが1か月しかもたず、その後現在まで横ばい
原油価格は為替や産油国の政治情勢にも左右されるため、価格水準を予想するのは難しい商品です。
1バレル70米ドルを超える水準が続くのであれば、日経平均株価がそれを無視して上昇し続けることはなさそうです。
70ドルを下回っている間
原油価格が日本経済に大きな悪影響を及ぼさず、企業業績や金融政策などファンダメンタルと呼ばれる基本的な経済活動に株価は左右される状況となります。
今回の石油施設攻撃に端を発した価格上昇があるとしても、「1バレル=70米ドル」までは大きな心配は必要ないと考えられます。
原油の輸入大国日本の株価位置を考える時の、1つの目安(メルクマール)として注目してみてください。
日本人から見ると中東問題は複雑ですが、原油価格が70米ドルを越えると有事だと認識できるでしょう。(執筆者:中野 徹)