世界経済の中心地であるアメリカ、その株式相場を代表する証券取引所がニューヨーク証券取引所です。
その中にありアメリカを代表する30社で構成されたダウ・ジョーンズ工業株価平均指数(以下、NYダウ)は、100年を越える歴史があり、世界景気を反映する指標として株式投資家以外からも注目される存在です。
世界景気の停滞が叫ばれている昨今、NYダウの値動きを元にした経済記事が多くなっています。
何気なく耳にするNYダウは何を表し、何故にこんなに注目されるのか、具体的な投資方法も解説します。

目次
歴史から見たNYダウの存在感
NYダウは30銘柄のみで構成されていますが、その時価総額は現在約800兆円です。
東証一部・二部の合計時価総額が約570兆円ですので、30社だけで日本の株式市場を越える規模感であることを考えると世界的な影響力の大きさが分かります。
NYダウの誕生は1896年
NYダウは、ウォールストリートジャーナルを発行しているダウ・ジョーンズ社が算出している株価指数で、1896年に当初12銘柄から始まりました。
1928年には現在の30銘柄となり、これをマネして日本では日経平均株価が産まれました。
構成銘柄は時価総額の大きさもさることながら、業種のバランスや投資家の関心が高いなど、様々な構成要素で入替えも行われています。
構成銘柄の時価総額1位のマイクロソフト、2位のアップルは、新興市場であるNASDAQ市場の会社であることを見ても、アメリカ株式市場の多様性が見て取れます。
構成銘柄は日本でもお馴染みの会社も多い
NYダウ30社の2019年構成銘柄は、次の通りです。
日本にも進出しているマクドナルドやナイキ、ウォルト・ディズニーも入っています。
ちなみに日本のトヨタ自動車が時価総額24兆円なので、15位ぐらいの位置でしょうか。
時価総額順に並べたのには、理由があります。
NYダウ指数は構成銘柄の株価単純平均で算出され、時価総額が大きい銘柄の値動きが指数の変動への寄与度が大きいということです。

※2019.9.27時価総額順
もう1つの代表指数S&P500
アメリカには、もう1つ代表的な株価指数があります。
「S&P500」は構成銘柄が500社あり、NY証券取引所全体の値動きを現わしています。
・ 株価単純平均ではなく時価総額加重平均にて算出する
というのがNYダウとの相違です。
NYダウは日本で言う日経平均225です。
S&P500はTOPIXに当たると覚えておきましょう。
NYダウへの投資方法

NYダウを身近に感じていただいた後は、投資方法をご紹介しましょう。
国内証券会社でも取扱いがあるので、わざわざ外国の証券会社に口座開設する必要はありません。
なお外国株式への投資となるため株式変動リスクに加え、為替変動リスクやカントリーリスクが発生するなど国内株式投資よりリスク・リターンともに大きくなりますので、許容できる資金での投資を検討しましょう。
主なNYダウへの投資方法
外国株式への投資となりますが、主に3つの方法でNYダウへ投資することが可能です。
先ずは国内証券会社で、外国証券取引口座を開設しましょう。
1. NYダウ連動型投資信託
いわゆる投資信託で、銀行でも取引可能です。
ただし保有期間中にかかる信託報酬が高く、投資信託はお勧めしません。
NYダウへ投資する際には、やはり証券会社で取引を開始しましょう。
2. NYダウ連動型ETF(上場投資信託)
NYダウへの投資は、このETFによる投資が主体となります。
ETF(上場投資信託)なら、
・取引時間内の売買が可能
・指値等の売買手法も使える
という多くのメリットがあります。
【1546】NEXT FUNDS ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価連動型上場投信は東証に上場しており、日本円で売買可能です。
ただし、為替変動リスクはありますのでその点は注意してください。
また【DIA US】SPDRダウ工業株平均ETFはNY証券取引所に上場しているETFで、国内証券会社でも取引可能です。
こちらは米ドル建となるため、事前に米ドルに交換する必要があります。
3. NYダウ個別銘柄を直接売買
NYダウは30銘柄なので、個別に売買することも可能な社数です。
NYダウの立会時間は、日本時間の23:30~翌6:00。現地時間の9:30~16:00となっています。
なお、3月第2日曜日~11月第1日曜日までのサマータイム期間は、1時間早くなります。
売買の価格はリアルタイム取引もあれば、相場がオープンした最初の価格で売買するなど証券会社によって選択できます。
日本の夜中ずっと起きておく必要はないようです。
「ダウの犬」戦略は一石二鳥の投資方法
「ダウの犬」戦略とは、値上がり益および配当利回りの両面でNYダウを上回ることを目指した投資手法です。
具体的には、
・ 翌年の12月31日に「その時点」で配当利回りの高い10銘柄に入れ替える
というプロセスを毎年繰り返す投資法です。
この売買を繰り返すだけなので、初心者にもお勧めの投資方法です。
配当利回りが高くなっているということは、株価が下がっていることが影響しており、イメージ的には値下がりした株を買い、値上がりした株と毎年入れ替える「逆張り戦略」の一つですね。
これはNYダウが超優良銘柄に絞られているから成立する投資方法です。
もちろん全ての期間でNYダウを上回る成績が上がっている訳ではありませんが、配当利回りで補填できる部分もあります。
NY証券取引所にはこの「ダウの犬」戦略を実践したETF「【DOD】Dogs of Dow ETN」が上場されており、個別売買や再投資の手間が省けます。
高配当銘柄にはディフェンシブ銘柄が多いので、景気後退が叫ばれているこの時期には有効な投資方法と言えるでしょう。
世界景気がわかるNYダウ
NYダウはアメリカの企業30社だけで構成されているものの、世界に業務展開している企業が集まっているため、「NYダウを見れば世界景気が分かる」と言われます。
やはり100年を越える指数としての歴史と、実際の世界景気との連動性が高いという実績(レコード)が残っているからこそ、景気局面が切り替わる今のような時期には注目度が上がるのですね。(執筆者:中野 徹)