最近、年金に関する不安を感じさせるニュース等も少なくありません。
こういう時代になると、お金をいかにして増やすかという点を、みなさん考えるようになります。
私自身、まさに資産を増やすお手伝いをするお仕事をさせていただいていますが、お金を増やすことは「手段」であり、「目的」はクライアントの方々の幸福だと考えています。
しかし、ときどきお金を増やすことに必死になり過ぎるあまり、お金を増やすことそのものが「目的」となってしまい、幸福とは程遠いと感じられる方がいらっしゃいます。
お金は、資産運用してもしなくても、どこかで最後は使います。
であるならば、自分がどのようにお金を使ったら幸福を感じるのかも、考える必要があります。
そこで、今回は、「お金と使い方と幸福感」というテーマで書いてみたいと思います。
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目次
年収と幸福感は必ずしも比例しない
ノーベル経済学賞受賞者である行動経済学者のダニエル・カーネマンの研究によると、
というデータがあります。(2016/6/18付 日本経済新聞 朝刊)
ある程度まで比例しているのは、最低限度の衣食住に関する支出を賄うことのできるお金がないと幸福を感じにくい、ということを示しているのではないかと思います。
ただ、それ以上の必ずしも必要性を感じないお金まで保有しても、幸福になるとはかぎらないので、よく言われる「お金があっても人は幸せにならない」という言葉は、必要最低限を上回るお金という意味で、正しいと考えることができます。
著者自身、10年以上証券会社に勤務した中で、いろんなお客さまを見てきました。
振り返ってみると、資産家のお客さまが、みんな幸せそうかというと、そうとは言えませんでした。
ある資産家の方は、保有している資産を持て余し、毎日退屈を感じていました。
また、ある資産家の方は、相続問題により家族内の「争族」が発生しプライベートでは苦労されていました。
このように、資産があることで、かえって幸せとはいえない状況にある方も少なからず見てきているので、上記のデータは個人的にも納得感があります。
幸福感につながる4つのお金の使い方
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お金の使い方と幸福との関係性に関する海外の心理学者やマーケティングの専門家の研究によると、
ことがわかっています。
特に経験の中でも、
・ 社会的なつながりが生まれる体験
・ 思い出話につながる経験
・ 自分が望む自分像に密接に結びつく経験
・ めったにないチャンスを与えてくれる経験
の4点にお金を使うと、幸福感につながると述べられています。
また、物質的な買い物では幸福感が持続しない一方で、経験的な買い物では幸福感は時間が経っても継続するということも合わせて述べられています。(エリザベス・ダン、マイケル・ノートン著「幸せをお金で買う」5つの授業)
みなさんが今までお金を使った出来事で、今思い出しても幸福を感じるものは何でしょうか?
おそらく、何かのモノを買ったことより、何かを体験したことに関する出来事が多いのではないでしょうか。
著者自身、この点について真っ先に頭に思い浮かぶのは、旅行です。
まさに思い出話として今でも楽しく話せる経験がたくさんあります。
また、その旅行先で出会った人との交流は、時間は短時間であっても、人とのつながりを感じられる幸せな時間として、今でも記憶に残っています。
何にお金を使うと幸福を感じるかご自身で考えてみる
このように考えると、体験に使うお金の価値は、その金額以上の価値を生むと考えることもできるでしょう。
このことを意識してお金を使えば、今ある収入の範囲内でも、より幸せな生活をしていくことも可能です。
また、幸福を感じるお金の使い方を身につければ、無駄な支出も減り、間接的に資産作りにもつながるでしょう。
貯金や資産運用で資産を増やし将来に備えることも大事です。
しかし、その資産作りがうまくいっても、そのお金の使い方を間違ってしまえば、せっかくの資産を台無しになってしまうおそれがあります。
貯金や資産運用と同じくらいに、「今のお金の使い方について見直してみること」も大事です。
今回記載した観点も参考にして、ご自身がどんなことにお金を使うと幸福を感じるのか、ぜひ1度考えてみてください。(執筆者:佐藤 彰)