日銀の金融緩和の影響も大きく、ここ数年は不動産投資ブームが続いておりました。
しかし、2019年に入り、かぼちゃの馬車のシェアハウスに始まったスルガ銀行の問題やレオパレスのサブリース問題など、不動産業界では不祥事が相次ぎました。
そのため、不動産投資ブームの間は、フルローンやオーバーローンで融資をしてきた金融機関が、リスクヘッジのため自己資金を2~3割求めるケースが増えています。
これから不動産投資を始めるには自己資金はいくらくらい必要なのでしょうか。

目次
自己資金は投資する物件によって違う
不動産投資と言っても築古戸建、ワンルーム、1棟アパートなどさまざまです。
築古戸建の場合は、融資が使えませんのですべて自己資金で賄う必要がありますが、ワンルーム、1棟アパートなどには金融機関の融資を使うことができます。
このように不動産投資では、購入する物件によって必要な自己資金は違います。
自己資金の目安
では、それぞれの不動産投資で必要な自己資金はどのくらいになるのでしょうか。
ここからは、購入する物件別に必要な自己資金の目安についてお話しいたします。
ここでの物件価格は、首都圏の事例を参考にしています。
1. 築古戸建
昨今、サラリーマン大家さんだけではなく、パートをしている主婦などの中にも築古戸建投資を始める人が増えています。
築古戸建投資では、築年数の古い空室の戸建を購入して、DIYや簡単なリフォームを行って部屋を貸します。
これまでは日本政策金融公庫が融資をしてくれていましたが、最近は新しく融資を受けるのが難しく、すべて自己資金で賄う必要があります。
必要な自己資金
自己資金の目安:150~450万円
物件価格:50~250万円
リフォーム費用:50~150万円
取得費(仲介手数料・登記費用等):40万円
2. ワンルーム

自己資金が少ないサラリーマン大家さんに人気の投資です。
ワンルーム投資では、基本的には都市部の収益用ワンルームを購入し、賃貸経営を行います。
築古と新築ワンルームがあり、
(2) 新築の場合は売主であるデベロッパーから購入する
のいずれかの方法で物件を入手し、賃貸経営を始めます。
どちらも融資利用が可能ですが、築古と新築では融資の条件は異なります。
(1) 築古ワンルーム
融資を利用する場合は、自己資金は1~2割必要です。
取得費用は約10%程度です。
旧耐震物件は融資してくれる金融機関が少ないため、購入したい場合は現金購入となります。
従って、ここでの対象は新耐震物件ということになります。
自己資金の目安:100~450万円
物件価格:500~1,500万円
頭金:50~300万円
取得費(仲介手数料・登記費用等):50~150万円
(2) 新築ワンルーム
融資を利用する場合は、フルローンが可能です。
取得費用は約5%程度です。
売主であるデベロッパーから購入するため、仲介手数料が必要ありません。
自己資金の目安:75~450万円
物件価格:1,500~2,500万円
頭金:0円
取得費(登記費用等):75~125万円
3. 1棟アパート

規模を大きく拡大したい大家さんに人気の投資で、必要な自己資金も多いため、医師などの士業や高収入のサラリーマンなど属性が高くないと取り組むのがなかなか難しい投資と言えます。
アパート投資にも築古、新築がありますが、現況築古アパートは融資を受けるのが難しいので、新築アパートについて説明いたします。
新築アパート
(2) 仲介会社を通して購入する
2つの方法があります。
融資を利用する場合は、劣化等級という住宅性能評価を取得するなど条件によってはフルローンが可能ですが、2018年後半から自己資金を2~3割要求する金融機関が増えています。
売主であるアパートメーカーから購入するため、仲介手数料は必要ありません。
(1) アパートメーカーから購入する場合(取得費用は約4%)
自己資金の目安:200~4,000万円
物件価格:5,000~12,000万円
頭金:0~3,600万円
取得費(登記費用等):200~480万円
(2) 仲介会社を投資して購入する場合(取得費用は約8%)
自己資金の目安:400~4,500万円
物件価格:5,000~12,000万円
頭金:0~3,600万円
取得費(登記費用等):400~960万円
使える自己資金に合わせて投資する物件を考える
購入したい物件によって、必要な自己資金は違います。
そのため、一気に規模を増やしたいのでアパート投資を始めたいと思っても、自己資金が200万円しかなければ始めることはできません。
また、融資を受けるにあたっても、職業や年収など個人の属性が大きく影響するので、まずは事前審査で自分がどの程度融資を受けられるかを知っておくことも重要です。
不動産投資を始めるにあたっては、自己資金と融資枠を確認し、まずはできる投資から始めましょう。
最初から無理な投資をするとリスクが大きくなってしまいます。
徐々にステップアップして目標に向かうということが不動産投資では重要です。(執筆者:山口 智也)