万が一の場合に備えて死亡保険へ加入しようと考えたとき、多くの方が悩むのは「保障額をいくらにしておくのが適切か」ということです。
商品のパンフレットやインターネットに載っている「相場」や「平均」で決めてしまう方も多いのですが、必要な保障額は各ご家庭によって大きく異なります。
そこで今回は、安心でムダのない保障額を計算する方法を解説します。
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目次
必要保障額の求め方
必要保障額は、次の計算式で求められます。
この計算式からもわかるように、死亡保険の必要保障額は家族状況やライフスタイルによって変わってきます。
たとえば、夫婦共働きで子どもがいない世帯であれば大きな保障は必要ありませんし、逆に小さな子どもがいて奥さまが専業主婦という場合には、手厚い保障が必要です。
「今後の生活に必要な費用」の求め方
「今後の生活に必要な費用」には、次のような項目が含まれます。
残された配偶者の生活費
残された配偶者の生活費の目安は、以下の式で求められます。
なお、平成30年の日本人の平均寿命は、男性が81歳、女性が87歳のため、「配偶者の余命」は平均寿命から現在の年齢を引いたものを使うとよいでしょう。
子どもが大学を卒業するまでの生活費
子どもが大学を卒業するまでの生活費は、以下の式で求めます。
子どもの教育費
子どもの教育費は、公立・私立、どのようなルートを通るかによって変わります。
保険見直し本舗や、保険相談サロンFLPなどのサイトを利用すると、簡単にシミュレーションできます。
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住居費
住居費は、持ち家か賃貸か、引っ越しをする可能性があるかといった条件により大きく見込みが異なります。
万が一のことがあった場合、どのように暮らすのかを想定して、かかる費用を求めましょう。
なお住宅を購入し、団体信用生命保険に入っている場合は、契約者が亡くなった際はローンの残額を支払う必要がなくなります。
そのため、住居費を算出するときはローンの支払いがないものとして考えましょう。
お葬式にかかるお金
お葬式にかかるお金は地域によっても差があるのですが、150~200万円ほどかかるといわれています。
予備費
生活費以外に、特別なレジャーや子どもたちへの援助資金などを見込んでおきたい場合は、それも含んで計算しておきましょう。
「今後期待できる収入」の求め方
「今後期待できる収入」には、次のような項目が含まれます。
遺族年金
遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。
基本的に、亡くなった方が自営業であれば「遺族基礎年金」のみが、会社員の場合は「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類をもらえます。
年金制度には細かい要件や例外条項も多いのですが、今回は一般的な場合を想定して計算方法をご紹介します。
遺族基礎年金
遺族基礎年金は、18歳未満の子がいる場合に支給されます。
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遺族基礎年金の年金額は次のとおりです。
※子の加算
第1子・第2子:各22万4,500円
第3子以降:各7万4,800円
遺族基礎年金は、子どもが18歳に到達する年度末まで受け取れます。
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遺族厚生年金
厚生年金は、「ねんきん定期便」を活用すると、受け取れる額の概算がわかります。
ねんきん定期便の「これまでの加入実績に応じた老齢厚生年金額」と「これまでの年金加入期間(厚生年金保険)」の欄を確認し、以下の式にあてはめてみましょう。
なお、中高齢寡婦加算という制度があり、
・ 子が18歳到達年度の末日に達して、遺族基礎年金を受給できなくなった
といった場合などに支給されます。
中高齢寡婦加算は遺族基礎年金の4分の3の額で、平成31年度は年額58万5,100円です。
老齢基礎年金
20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた人は、65歳から満額の老齢基礎年金をもらえます。
満額の年金額は年度によって異なります。平成31年度は年額78万100円です。
死亡退職金
亡くなった方が会社員の場合は、会社から死亡退職金が支払われる場合があります。
会社の規定をあらかじめ確認しておきましょう。
遺族の就労収入
遺族が働きに出られる場合は、その収入分もプラスできます。
「必要十分」な保障額の見極めが大切
死亡保険金の「相場」や「平均」は、1つの目安にはなりますが、各ご家庭のライフスタイルや、どこまでを保険金でまかなうかという考え方次第で、必要な保障額は大きく異なります。
死亡保険への加入を検討する際には、少し手間はかかりますが、一度しっかり「自分たちはいくらの保障があればいいのか」を見積り、ムダのないプランを選択することが大切です。(執筆者:AFP、2級FP技能士 青海 光)