ひとり親家庭の平均収入額は、母子家庭の場合は200万円、父子家庭の場合は398万円(平成28年度 全国ひとり親世帯等調査 厚生労働省)となっています。
夫婦がそろっている家庭と比較すると、ひとり親の収入状況はとても厳しいのが現実です。
しかし、子供の成長に伴って、家計の支出は確実に増えていきます。
特にシングルママの家庭では、限られた収入のなかで日々の家計費をやりくりするだけで精一杯で、教育費がなかなか準備できないケースが少なくありません。
こうしたひとり親世帯がぜひ利用を検討したい公的な貸付制度が、「母子父子寡婦福祉資金貸付制度」です。
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目次
「母子父子寡婦福祉資金貸付制度」とは
ひとり親世帯への代表的な公的支援でもある「児童扶養手当」は、ひとり親世帯の日々の生活をサポートするための手当金です。
しかし、子どもの進学資金や就学中の資金は高額になるので、「児童扶養手当」だけでは限界があります。
どうしてもお金の都合がつかない時に利用できるのが、母子家庭、父子家庭、寡婦家庭を対象にした国の貸付制度「母子父子寡婦福祉資金」です。
ひとり親世帯の経済的自立と子どもの福祉の充実を図るための制度ですが、意外と知られていない貸付制度です。
・ひとり親が就職(自立)するために必要な技能を習得する
ための費用などを借りることができます。
連帯保証人をつければ無利子、連帯保証人をつけなくても1%と低金利なので、民間の金融機関でお金を借りるよりも返済の負担は軽くなります。
貸付種類は12種類 子どもの就学にも利用できる
「母子父子寡婦福祉資金」で借りられる項目は、全部で12種類あります。
・ 事業開始資金
・ 事業継続資金
・ 修学資金
・ 技能習得資金
・ 修業資金
・ 就職支度資金
・ 医療介護資金
・ 生活資金
・ 住宅資金
・ 転宅資金
・ 就学支度資金
・ 結婚資金
離婚後の生活を立て直すための項目や経済的に安定した自立をするための項目とともに、就学支度資金や修学資金など子どもの進学や就学に関する項目もあります。
厚生労働省によると、貸付金の件数、金額ともに約90%が子どもの就学資金関係となっている調査結果も発表されており、ひとり親世帯にはなくてはならない貸付制度となっています。
修学資金は、授業料、書籍教材費、交通費
などに充てることができるので、ひとり親世帯の教育費負担を軽減できるメリットがあります。
さらに、連帯保証人の有無を問わず、無利子で貸付を受けられるのも見逃せないポイントでしょう。
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貸付を受けるには審査がある
お金を借りる時に必ず通るのが、貸付に関する審査です。
もちろん公的な制度の「母子父子寡婦福祉資金」であっても、貸付審査、面接を通過する必要があります。
そのため、貸付審査の結果によっては、
連帯保証人が必要になる
場合があります。
審査に通らないケースとしては、
・ ほかの借入金を含む年間返済額が収入の25%を超えている
場合が挙げられます。
また、貸付申請時に家計の収支計画書や入学許可書の写しなどが必要となっていることから、本当に必要な金額の貸付を受け、計画的にきちんと返済できることが審査の大きなポイントといえるでしょう。
貸付の相談や申請はお住まいの自治体の窓口へ
「母子父子寡婦福祉資金」の貸付申請は、自治体の役所窓口で手続きできます。
申請書類は窓口に置いてあるので、まずは気軽に相談することから始めてみましょう。
「母子父子寡婦福祉資金」を上手に利用すれば、「ひとり親家庭だから、経済的に無理」と子どもが希望する進路や将来を制限する必要はありません。
子どもが安心して学べる環境を整える可能性とチャンスを探ってみませんか。(執筆者:花見 結衣)