老後プランの難しさは「寿命が予測できないこと」に端を発しています。
寿命という不確定な要素を抱えた状態では、そもそも老後のマネープランなど作成しようがありません。
本来、長生きとは喜ばしいことであるはずなのに、それ自体をリスクと言わざるを得ない社会環境が今日の姿なのです。

目次
終身型の公的年金制度を最大限活用しよう
こうしたジレンマを解決してくれる制度が終身型の公的年金制度です。
「終身型」とは、一言でいえば、「生存している限り、無期限で給付が約束されている」ということです。
老後破産を回避するには、この終身型の年金制度を最大限に活用する必要があります。
最も合理的な老後プランの考え方として、貯蓄(資産)と年金を適材適所で使い分けることを提案します。
一般的な貯蓄(資産)を切り崩す方法は、寿命が不確定なため老後のマネープランとの相性が悪いのです。
一方、公的年金であれば、早死にすると損失といったデメリットはあるものの、予測不能な寿命にはめっぽう強いのです。
以上の特徴から、確実に老後破産を回避する方法を探ってみます。
75歳をボーダーに考える
適切かどうかはいったん横に置いておいて、75歳までを「ほぼ確実に生存しているであろう期間」と仮定します。
そして、期間が限定されている75歳までに貯蓄を投入します。
75歳以降については「いつ何が起きてもおかしくない、不確実な領域」と仮定して、ここには公的年金をあてます。
こうして性格の違うお金を二分して、垂直に並べます。
貯蓄は、
わけです。
公的年金は不確実な75歳以降にあてることで、資金の枯渇といった老後プランで最も恐れるシナリオを回避できます。
少々極端ですがとりあえずここまでは、まずは考えかたとしてザックリと説明しました。
75歳まで年金受給を繰り下げるとどうなるか

これを現在の制度にあてはめると、年金受給開始年齢の繰り下げ制度を活用することになります。
今後、年金受給開始年齢は60歳~75歳の選択制に拡大されそうなため、ここではあえて、75歳まで年金受給を繰り下げる前提で話を進めてみます。
※来年(2020年)の通常国会に提出される予定の年金制度改革関連法案で、受給開始年齢の上限を現行の70歳から75歳に引き上げる方向で、また受給額も65歳受給の約1.8倍の規模が予定されて、すでに検討が進められています。
この提案のポイントは2つです。
(1) いつまで働けるか
最大のポイントは「いつまで就労による収入が得られるか」の一点です。
できるだけ長く働ければ、貯蓄を切り崩す期間を短縮できます。
(2) 75歳までの蓄えを準備する
次のポイントは、75歳まで集中的に投入できるように、貯蓄を準備する必要があります。
一般的には、iDeCo(イデコ)、NISA(ニーサ)、その他退職金などで準備することが妥当かと思われます。
以上で論理的には老後破産の回避が可能です。
なお、75歳というラインは暫定的であることは言うまでもありません。
ポイントは老後の生活環境として「年金収入>老後の支出」の状態になるラインまで、年金の繰り下げを行うことです。(執筆者:長崎 寛人)