相続税の計算方法は法律で決まっていますが、実際には払い過ぎているケースがとても多く、税理士に依頼して相続税の申告をしたのに払い過ぎているケースも珍しくありません。
払い過ぎた相続税は、後から取り戻せます。
この記事では、どうして相続税の払い過ぎが発生するのか、払い過ぎに気付いたらどうすればよいのかを解説します。
最近相続税を納めた方は、1度チェックされることをおすすめします。
目次
相続税の払い過ぎが発生する3つの理由

相続税の払い過ぎが頻発しているようです。
相続税を専門とする大手の税理法人によれば、相続税の還付の相談を受けた案件のうち約7割の人が実際に相続税を払い過ぎていて、1人あたり数百万円~数千万円が還付の対象になっているとのことです。
払い過ぎているのに気付いていない人も多くいるはずです。
どうして相続税の払い過ぎが発生するのか、その理由は3つ考えられます。
理由1:相続税制が複雑すぎる
相続税を計算するためには、遺産の評価額に税率をかけます。
この公式はシンプルなのですが、遺産の価値を評価する方法が非常に複雑なのです。
特に土地の評価は複雑になっています。
評価方法が複雑なだけでなく、減額要素にもさまざまなものがあります。
また、相続税にはさまざまな控除や特例もあり、種類も多く、要件が非常に複雑に定められている特例もあります。
土地の価格を正確に評価し、個別のケースで最も有利になる控除や特例を適用して相続税を計算することは、プロの税理士でも非常に難しいことです。
実際、相続税を払いすぎているケースには、不動産を相続している場合が多いのです。
理由2:相続税に強い税理士が少ない
どのような税理士でも相続税の申告の依頼を受ければ、一応の処理はできるでしょう。
しかし、実は大半の税理士は相続税申告の経験は少ないのです。
税理士の登録者数は約7万人で、相続税の課税対象となる被相続人の数は年間約11万人です。
単純計算しても、税理士1人あたりの相続税申告件数は年間1件強です。
実際には相続税申告に力を入れている税理士が多数件を処理していますし、全てのケースで税理士に依頼しているわけでもありません。
そうすると、年間1件も相続税申告をしていない税理士がたくさんいることになります。
経験が少なければノウハウも少ないのも無理はありません。
相続税の申告は税理士が10人いれば10通りのやり方があると言われている世界です。
同じケースで
だと考えるべきなのかもしれません。
ただ、できることなら豊富なノウハウを持っている税理士に依頼して相続税を安く抑えたいものです。
理由3:税務署が指摘してくれない
税務署は申告納税額が過小な場合にはすぐに連絡してくるのに、過大な場合には何も言ってくれません。
しかも、相続税の計算に関しては税務署でさえ絶対に正しいとは言えません。
税務調査を受けた後でもなお、相続税を払い過ぎていて還付可能であるケースもあります。
なぜかというと、前述したとおり
からです。
現地調査をしていないために土地の価格評価を誤って申告したケースで税務調査が入った場合、税務署としても現地調査にまでは手が回らないため、価格評価の誤りはそのまま見過ごされてしまいます。
税金を課すのであれば固定資産税のように徴収する側が全ての計算をする制度にしてほしいところですが、現状ではやむを得ません。

払い過ぎに気付いたら「更正の請求」
相続税を払い過ぎたことに気付いたら、「更正の請求」をすることによって、払い過ぎた分の還付を受けられます。
更正の請求ができるのは、相続税の申告期限から5年以内です。
つまり、
たた、払い過ぎに気付いても自分で更正の請求をするのは難しいでしょうし、そもそも払い過ぎているかどうか分からないことも多いでしょう。
そのような時には、相続税に強い税理士に相談するしかありません。
相続税に強い税理士を探すのも一苦労かもしれませんが、更正の請求で間違ってしまうと税務調査が入る危険性が高まってしまうので、慎重に税理士を選ぶ必要があります。
たまたま紹介された近場の税理士や、いつも所得税の確定申告を依頼している税理士は、相続税申告のノウハウをあまり持っていない可能性が高いということは頭に置いておいたほうがよいでしょう。
土地を相続した場合には特に注意
相続税を納めた金額が少額であれば、払い過ぎていたとしても少額なので、費用対効果を考えてそのままにしておいてもいいかもしれません。
しかし、土地を相続した場合で、数百万円の相続税を納めた場合は、払いすぎの金額も高額になっている可能性があります。
5年以内にそれなりの金額の相続税を納めた方は、相続税に強い税理士に相談してみるといいかもしれません。(執筆者:川端 克成)