民法改正で、自筆証書遺言の作成が少し楽になったというお話を先日しました。
遺言には主に2種類、自筆証書遺言と公正証書遺言があるのはよく知られています。
自筆証書遺言の場合、遺言通りの相続を行うためにはまず家庭裁判所において「検認」を行わなければなりません。
今回はその手続きについて説明します。

目次
検認は家庭裁判所で行います
検認とは「相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続」です。(引用元:裁判所)
つまり、
2. 遺言書が法的に正しい形式で作成されていることを関係機関に保証する
という2つの目的のために必要な手続きということです。
手続きの流れと必要書類
遺言者死亡後に、遺言の保管者(または発見した相続人)が速やかに、遺言者の最後の住所地にある家庭裁判所に検認の申立てを行います。
費用として、
・ 遺言書1通につき800円(申立書に収入印紙で貼付)
・ 連絡用の郵便切手(84円 × 相続人の数 × 2とする裁判所が多い)
が必要です。
また、
・ 相続人全員の戸籍謄本
も添付します。
申立て受付後、裁判所からすべての相続人に対し、検認を行う日について通知を行います。
検認当日には遺言書と印鑑、その他裁判所から指示されたものがあれば持参し、相続人立会いのもと担当者が遺言書を開封し、検認作業を行います。
検認が終われば、検認済証明書の申請(遺言書1通につき150円)をします。
証明書がないと、金融機関や法務省などでの執行ができないので、忘れないよう注意しましょう。
注意すべきこと

(1) 相続人全員に通知は行きますが、全員が検認に立ち会う必要はありません
遠方にいたり、病気だったりという事情もあるので、本人の意思に任されます。
ただし、申立人は必ず立ち会わなければなりません。
(2) 検認が済むまで遺言書を開封しないでください
開封されていたからといって無効になる訳ではありませんが、改竄を疑われるような行為は慎むべきでしょう。
なお、最初から封印されていない場合はやむを得ないので、そのまま持参しましょう。
(3) 検認は形式にのっとって書かれていることを確認する作業です
(2)とも関連しますが、検認はあくまでも遺言が形式にのっとって書かれていることを確認する作業です。
書かれている内容が適切であるかなどの判断は一切行われません。
したがって、「本人がこんな内容の遺言を書くわけがない」といったような遺言自体の有効、無効については別途遺言無効確認訴訟を起こす必要があります。
最後に、検認期日は申立てをしてから1か月以上後になることもあります。
何をさておいても遺言書がなければ相続を始めることはできないので、くれぐれも余裕を持って申立てをしましょう。(執筆者:橋本 玲子)