年金においては2つの大きな特徴をおさえることで、マスコミなどによる誤った年金報道に振り回されることなく冷静に議論ができます。
それは
・ 年金は賦課方式である
という2点です。
目次
1. 年金は「保険」である

そもそも
保険とは、人生のさまざまなリスクに備えて、お金を出し合ってリスクに直面した人に給付される、助け合いのシステムです。
年金を単純化していえば、早死にした人の保険料で長生きした人を支える仕組みなのです。
一見するとハッピーな長生きを保険事故と捉えるところは何か釈然としませんが、年金の仕組みは間違いなく保険です。
無条件で保障される福祉政策ではないのです。
経済的損得の概念はあてはまらない
「年金は保険」という意識を持つことは重要で、「保険」といった途端にそこに経済的損得といった概念は介在しなくなります。
火災保険、自動車保険、どれもリスクへの必要コストとして保険料を払っています。
これらの保険を損得で言ってしまうと、火災にも自動車事故にも遭遇しないほとんどの人は払い損になるというわけです。
よく、
という人がいますが、本当に自分で積立てられますか。
火災保険を解約して、火災に備えて自力で積立なんてしませんよね。
繰り返しますが、年金は保険です。
そのための保険料はリスクへの必要コストなのです。
金融商品のように単純な損得勘定で評価する性格のものではありません。
2. 年金は賦課方式 社会全体の「仕送り制度」

気持ちはわかります。
しかし、日本の年金制度は賦課方式(修正賦課方式)を採用しています。
これは、簡単にいえば今払っている保険料は、今の高齢者の年金にあてられており、社会全体で仕送りをしているような仕組みなのです。
つまり、金融商品のように、積み立てて運用して将来受け取る方式ではありません。
仕送りしたお金を「やっぱり返せ!」と乱暴なことは言えませんよね(もう使ってしまっているし)。
年金制度の抜本改革として、賦課方式から積立方式に転換すべきとの論調をよく耳にしますが、その場合には
確かに積立方式であれば社会問題である少子化高齢化等の影響を直接受けることはありませんが、一方で物価の上昇、金利の変動といった経済変動の影響を直接被るといったデメリットもあります。
ですから、現実的にはいったん賦課方式でスタートした制度を積立方式に変更する改革は極めて難しく、他国にも例がありません。
世代間格差についてはポジティブに考える
賦課方式については世代間格差を指摘する人もいますが、これを言い出したらキリがありません。
各世代に生まれた運命を背負っていくしかないのです。
今の高齢者は優遇されているといった世代間格差は確かにありますが、現役世代は今や100歳まで生きられると言われており、80代で亡くなる現在の高齢世代よりお得であると考えることもできます。
したがって世代間格差については、あまり感情的にならず(もちろん制度的に是正できる格差は改善すべきですが)気持ちの中ではチャラにしましょう。(執筆者:長崎 寛人)