2019年12月5日、史上最大の2.7兆円を「サウジアラムコ」がIPOして資金調達したことがニュースになりました。
「サウジアラムコ」のIPOの規模は大きく2014年の中国のEコマースで有名なアリババグループを上回り、世界の時価総額ランキング1位のアップルの時価総額も上回る見こみです。
IPOといっても「サウジアラムコ」は新しい企業ではありません。
設立は1933年にまでさかのぼる歴史あるサウジアラビア国有の石油会社です。
海外投資に興味のある方は世界最大の「サウジアラムコ」の動向も気になるのではないでしょうか。
本記事では「サウジアラムコ」の紹介とIPOの背景、個人投資家のとるべきスタンスについてご紹介します。
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目次
世界最大の国有石油会社
「サウジアラムコ」は世界最大の石油会社です。
もともとはアメリカの石油企業大手「シェブロン」の子会社「カソック」がサウジアラビアの王家との合意書に調印して、石油利権を獲得したことが誕生のきっかけになりました。
その後、「カソック」は「アラビアン・アメリカン・オイル・カンパニー」という社名になりました。
この社名の通称がアラムコです。
その後、紆余曲折をへて国有化が進み「サウジ・アラムコ」という名称になりました。
世界では資源関係の大手企業が、半官半民であったり国有企業だったりすることは珍しくありません。
例えば天然ガスの世界最大企業である「ガスプラム」は半国営企業でロシア政府が5割の株を握っています。
南米最大の原油関連企業の「ペトロブラス」もブラジル政府が半分の株を握っています。
ベネズエラも「ペトロレオス」という石油の国有企業を有しています。
IPOの背景
ロイターの最近の報道でもサウジアラビアの財政赤字が報じられています。
原油価格の低迷やOPEC主導の石油の減産でサウジアラビアの財政の収支は良い状況ではありません。(参考元:ロイター)
サウジアラビアはイメージの通り原油で稼いでいる国です。
しかし原油に国の収益の大部分を依存しているため将来的には脱原油の方向を目指しています。
同じ中東のドバイやアブダビで構成されているUAE、も脱石油依存を進めているのと同じです。
サウジアラビアは「ビジョン2030」という目標を掲げており、経済繁栄は重点目標のひとつに挙げられています。
IPOによる資金調達は厳しい財政難を乗り切り、今後の経済発展の改革を目指すためではないかと市場関係者は見ているようです。
実力とESG投資
「サウジアラムコ」は米国のApple、Google、エクソンモービルを足したプロフィットキングのような企業です。
サウジアラビア政府は財政難ですが、「サウジアラムコ」そのものは経営状態の良い優良企業と言えるでしょう。
一方で持続可能な開発を重視するESG投資の観点では、二酸化炭素排出で環境に悪影響を与えているという理由で「サウジアラムコ」は投資先として不適格な面があります。
優良企業である反面、今のSDGsやESGといった観点でネガティブな性質があることにも留意しておくべきです。
日本の個人投資家が買えるのは先
「サウジアラムコ」はサウジアラビア国有の世界最大の石油企業です。
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「サウジアラムコ」は残念ながらサウジアラビア国内での上場となるため、通常、日本の個人投資家が気軽に買える銘柄ではありません。
IPOされる理由はサウジアラビア政府の財政収支の悪化と、2030年に向けた脱石油化と経済の繁栄のために資金が必要だからと言われています。
Apple、Google、エクソンを合わせたような利益をだす優良企業である反面、ESG投資の観点からはネガティブな側面もあります。
サウジアラビア国内の上場のため、日本人投資家は気軽に買えませんがアメリカや日本に将来、上場される可能性もあるため興味がある方は動向を追うと良いでしょう。(執筆者:田守 正彦)