個人の資産運用や社会保障、イノベーションへの投資等に関する諸制度の見直し・新設を盛り込んだ令和2(2020)年度税制改正大綱が決定しました。
中でも、特に個人の資産形成に関わる少額投資非課税制度「NISA」の制度改正が話題になっています。
今回の記事では、新しいNISA制度の内容と個人に適した制度の選び方についてご紹介します。

目次
一般NISAは2028年まで延長、2024年から変わる制度内容とは
現在施行されている少額投資非課税制度「一般NISA」は、
です。
個人の投資による資産形成に役立てる目的で2014年1月にスタートし、令和元年6月末時点で1,161万口座が開設されています。
銀行預金の金利低下と年金不安を受けて投資に興味を持つ人が増え、その認知度は年々高まっています。
しかし、実際には短期的な株式売買に使われるケースも多いとされ、投資対象も幅広い事から「投資初心者向けではない」、「若年層の老後資産形成に向かない」との批判が強まっていました。
そのような声を受け、与党が2020年度税制改正大綱に「一般NISA」の制度改正を盛り込んだことが12日に発表されました。
現行の「一般NISA」では年間120万円までの枠で投資信託や株式等幅広い商品の買付が可能となっており、NISA口座内で買付けた商品はその後5年間、売却益や配当金が全て非課税となる仕組みでした。
一般NISAは2023年に終了予定でしたが、期間が5年延長されるとともに、2024年以降は制度の内容が変わる事が決定しました。本制度改正では、本来の目的である安定的な長期運用による資産形成を促すため、
に変更されます。
特に重要なのは、1階部分に投資しないと2階部分が使えないという縛りができるという点で、それにより個人投資家のリスク低減および長期投資の推進を計る狙いがあります。
非課税期間は従来と同じ5年間となっています。
1階部分で投資対象になる商品はまだ決定していませんが、現在「つみたてNISA」や「iDeCo」で選定されているようなインデックス型や債券など低リスクな商品が選ばれると考えられます。
「つみたてNISA」は延長、「ジュニアNISA」は予定通り終了
低リスク商品への長期、積立、分散投資を支援するために2018年から始まった非課税制度「つみたてNISA」は2037年までであった期限を2042年まで5年間延長し、いつ始めても20年間の非課税優遇を受けられるように変更されることとなりました。
「つみたてNISA」と「一般NISA」の統一化が求められていましたが、今回の決定では「一般NISA」の制度内容が変わるのみで統一化はされない予定となっています。
また、未成年者を対象とした少額投資非課税制度である「ジュニアNISA」については利用者が少ないことなどを受け、当初の予定通り2023年末を持って終了することが決定しました。

「新NISA」と「つみたてNISA」選び方のポイント
現在「一般NISA」と「つみたてNISA」の併用はできず、口座開設時にどちらかを選ぶことになっています。
2024年から始まる「新NISA」についても同様であり、「つみたてNISA」とどちらかを選択することになる見込みです。
今までは
「つみたてNISA」:長期的な資産形成や投資初心者に向いている
といったイメージがありましたが、「新NISA」でも基本的にはそういった使い分けが続くと思われます。
しかし、1階部分ができたことで、「リスクは抑えたいけれど株も買ってみたい」といったニーズをもつ層にとっては使いやすい制度になるかもしれません。
年間122万円までといってもその枠全てを使わなくてはならない訳ではないので、自分に合った金額の範囲内で使えます。
例えば、現在「つみたてNISA」を年間40万円利用している人でも、
など、自分好みにさまざまな使い方ができます。
ただし、「新NISA」でも非課税期間が5年と短いことには変わりないので、長期的な運用を重要視する場合には引き続き「つみたてNISA」を選ぶ方が得策と言えるでしょう。
また、現在「一般NISA」で取引している場合、2024年以降に非課税期間が終了する商品について「新NISA」に移管することが可能かどうか、というのも気になるポイントですが、「現行NISA」から「新NISA」へのロールオーバーについては現時点で情報が出ていません。
現行の「一般NISA」から「新NISA」への移行や「新NISA」の1階部分の投資対象商品については今後も情報収集が必要になりそうです。
「新NISA」の情報収集は早めに、自分に合った方法を検討
「新NISA」制度は、低リスク投資枠と自由投資枠の2階建てとなるため、初心者にとってはさらに分かりづらい仕組みになってしまいます。
今のうちから積極的に情報収集し、自分に合った方法を探していく必要がありそうです。(執筆者:島村 妃奈)