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2019年の各国中央銀行の動き

2019年は、各国中央銀行とも金融緩和に舵を切った1年になりました。
米国・ユーロ圏
米国の中央銀行(FRB)は2018年12月まで利上げ・金融引き締め方向に動いていたものの、2018年末に株価が急落したことに加えトランプ大統領からの圧力もあり、急に金融政策を緩和方向に見直しました。
また、ユーロ圏の中央銀行であるECBも、金融緩和策は2018年末で一旦終了していたものの、11月から再度緩和方向へと転換しました。
新興国
一方、新興国も2019年は緩和方向へ金融政策を見直しています。
新興国はこれまで、FRBの利上げに追随する形で金融引き引締めの方向に向かっていました。
これは、米国の利上げに伴い、米国と新興国の金利差が縮小し、新興国から資金が流出するのを防ぐためです。
しかし、2019年に入り後FRBが緩和方向へと金融政策を転換し、新興国からの資金流出懸念がなくなると、インドやマレーシア、フィリピン、南アフリカ、ロシア、ブラジルなどの新興国は米欧に先んじて利下げを始めました。
金融緩和効果が発現した2019年
FRBは7月、9月、10月のFOMCで会合連続となる利下げを行いました。
また、FRBのバランスシート調整の終了も、当初予定の9月末から7月末に早まりました。
ECBも9月に利下げを行い、11月からは月間200億ユーロの国債買い入れを再開しました。
これらと時を同じくして、米国をはじめとする世界の株価は上昇を始めました。
その流れは足元まで続いており、世界的に株価は上昇基調を保っています。
米国やブラジルの株価指数は、過去最高値圏で推移しています。
また、今年は米中の貿易摩擦の影響を受け、製造業が大きな打撃を受けたドイツでさえ、年初来で25%程度上昇しています。
もっとも、その間の企業業績というと芳しくはありません。
米国も日本も2019年は減益見通しです。
つまり、足元の株価上昇は、企業業績に裏付けられた業績相場ではなく、各国中央銀行の金融緩和によるカネあまりがもたらした金融相場といえます。
金融緩和により増大したリスク

世界的な金融緩和により、次の2つのリスクが高まっています。
大幅な調整
金融相場は、企業業績の裏付けがなく勢いだけで上昇している相場といえます。
そのため、何らかの出来事をきっかけに株式相場が急落する危険性があります。
好調な企業業績という裏付けがある株価上昇(業績相場)であれば、何らかをきっかけに相場が大きく調整したとしても、好調な業績に着目し、すぐに相場は盛り返します。
しかし、裏付けのない金融相場の場合は、一旦調整するとその後の回復に時間を要することがあり注意が必要です。
インフレーション
また米国のように、物価上昇率が比較的高い国が金融緩和を行えば、将来のインフレリスクを高めることにもなります。
米国の物価は、11月のコアPCEデフレーターは前年同月比で1.6%の上昇、コア消費者物価指数(CPI)は2.3%の上昇と、世界的なインフレ目標の2%の水準に近づきつつあります。
つまり、物価の面からすれば、米国は金融緩和を行わないといけないような状況にはないのです。
一旦インフレが起こると、コントロールが非常に難しくなるのは歴史が語っているところです。
足元は、世界的に金融緩和状態で、株式市場も上昇基調を強めていますが、大幅な調整や将来のインフレリスクには注意を払うことが大事でしょう。(執筆者:土井 良宣)