副業を検討している人は多いと思いますが、その方法としてバイナリーオプションが紹介されることがあるようです。
結論を言ってしまうと、「簡単にもうけたい」といった軽い気持ちで取り組むバイナリーオプションは、
にすぎません。
とくに海外の無登録業者のバイナリーオプションをめぐっては、国内では禁止されている短時間の取引も可能で、軽い気持ちで始めてしまう人も多いせいか詐欺被害も多いようです。
2018年には814件(前年比96%増)の相談が消費生活センターに寄せられており、その平均被害金額は約40万円(2018年以降の集計)と少なくない金額です。
【参考】:令和元年10月24日発表の独立行政法人国民センターの報告書(pdf)
もしバイナリーオプションを始めるのであれば、ある程度の覚悟を持って真剣に取り組むべきというのが筆者の考えです。
今回は、バイナリーオプションの仕組みや性質について解説しながら、副業として軽い気持ちで始めるべきでない理由を解説していきたいと思います。
目次
バイナリーオプションの仕組み
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バイナリーオプションとは、将来の為替レートなどの状況に応じて一定のペイアウトを受け取れる権利(オプション)を売買する金融商品のことです。
たとえば、「20時にドル円が110円より高くなれば1,000円を受け取れる」という権利を600円で購入して、
・ その通りにならなければ600円の損失
が出るというイメージです。
バイナリーオプションの種類
ペイアウトを受け取れるかどうかの判定方法に応じて、バイナリーオプションにはさまざまな種類があります。
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どの種類でも二択の予想が当たれば勝ち、はずれれば負けというかたちで、シンプルで簡単なのがバイナリーオプションの特徴です。
むちゃなやり方をすれば資金を何倍にも増やすことが不可能ではないため、魅力的に見えてしまう人もいるようです。
とくに海外の未登録業者が提供する、30秒や1分など極端に短時間のバイナリーオプションでは、この傾向が強くなります。
国民生活センターは、
予想がはずれれば、支払ったオプション料がすべて損失になりますが、短期間に繰り返し取引することができるため、損失額が大きくなるおそれがあります。
(引用元:国民生活センター公式ページ)
として、海外の未登録業者でバイナリーオプションをすることに注意喚起を行っています。
運営業者とトレーダーの利益相反関係
バイナリーオプションでは、オプションを購入時にトレーダーは業者にオプション代金を支払います。
そして、勝てばペイアウトが業者からトレーダーに支払われ、負ければ業者からトレーダーには何も支払われません。
このように、トレーダーと業者の間で資金のやりとりが行われる仕組みなので、トレーダーの利益は業者の損失になり、トレーダーの損失は業者の利益になります。
国内事業者の実績
信頼性の高い国内業者について2019年11月の取引実績を見てみましょう。
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受取総額: オプション購入時にトレーダーが業者に支払った金額の合計
です。
つまり、支払総額に対する受取総額の割合(受取総額 ÷ 支払総額 × 100)が100%未満の場合に、業者に利益が出ていることになります。
業者は事業としてバイナリーオプションのサービスを提供しているので、トレーダーには損失を出してもらって、自分たちの利益を確保する必要があります。
その利益から人件費や広告費、システムの開発・運用費、出資者への分配金などを捻出しているわけです。
もしこれができなくなれば、サービスを終了することになります。
トレーダーを勝ちにくくすれば事業の収益が上がる
バイナリーオプションでは、業者がオプション購入金額やペイアウト金額、判定レートなど、取引条件を決めるため、これらの取引条件を調整すれば利益をコントロールできます。
上記の表には支払総額に対する受取総額の割合が100%を超えているところがありますが、これは事業として赤字の状態です。
トレーダーにとってはありがたい取引環境だったと言えますが、この状況がずっと続くようであれば業者としては何らかの対応をせざるを得ないはずです。
具体的な対応としては、たとえば以下のようなことが考えられます。
・ オプション売却金額を下げる
・ 判定レートの設定を見直す
対応をやり過ぎてしまうとトレーダーが離れていくので注意も必要ですが、いずれもトレーダーを勝ちにくくする調整で、事業の損益はすぐに改善することでしょう。
ここで考えてほしいのが、トレーダー側の技量が上がれば、業者としては取引条件を厳しくせざるを得ないという点です。
つまり、バイナリーオプションというのは、
という仕組みの世界なのです。
副業としてバイナリーオプションで継続的にお金を稼ぎたいのであれば、周りより成長し続けるという強い覚悟を持って取り組む必要があるわけです。
世界的に規制されゆくバイナリーオプション
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実は個人投資家向けのバイナリーオプションに対しては世界的に風当たりが強くなっており、たとえばEUやイギリス、カナダでは完全に禁止になっています。
バイナリーオプションはシンプルなので誰でも始められるハードルの低さがありますが、ダマされやすい初心者を狙った詐欺まがいの行為も横行していました。
そのため、これらの地域では「バイナリーオプション = 詐欺商品」とみなされてしまっているのが現実のようです。
日本では厳しい規制がかかっている
一方、日本ではバイナリーオプションには厳しい規制がかかっており、それをクリアした登録業者しかサービスを提供できません。
「規制によってシンプルや簡単といった特徴が失われてしまった」という批判もありますが、だからこそ国内業者は信頼性を維持することができており、バイナリーオプションという金融商品が生き残れているのかもしれません。
海外業者ではトラブルも起きている
ただ、インターネットは国境を越えてアクセスが可能なので、日本にいながら国内では無登録の海外業者を利用することもできてしまいます。
冒頭で説明したように、そうした海外の無登録業者のバイナリーオプションをめぐっては、詐欺などのトラブルが起こっています。
詐欺のパターンとしては、大きく分けると以下の2つです。
・「絶対にもうかる」などと勧誘され、効果のない手法やツールを高額で購入させられる
これらの詐欺が起こっていることを認識したうえで、バイナリーオプションを始める際には慎重に行動することが必要です。
バイナリーオプションは慎重に検討を
最後に、バイナリーオプションについて押さえておいてほしいポイントをまとめておきます。
業者とトレーダーは利益相反関係にある
バイナリーオプションは業者とトレーダーの間の相対取引であり、両者は利益相反関係にあります。
そのため、
・ 業者は利益を確保できるように、取引条件を調整する
・ トレーダーがうまくなって利益を出すようになれば、取引条件は厳しくなっていく
という特徴があります。
海外の未登録業者は詐欺の対象になりやすい
海外の未登録業者は日本では認められていない短時間のバイナリーオプションを提供しています。
これらは取引が過度にシンプルで初心者が始めやすいため、以下のような詐欺の対象になりやすいところがあります。
・ 「絶対にもうかる」などの言葉で勧誘され、効果のない手法やツールなどを購入させられる
バイナリーオプションは金融商品ではありますが、還元率100%未満のギャンブルに近い性質を持っています。
特別なテクニックがないまま取引を継続すれば必ず損失が出ますし、仮に特別なテクニックがあっても、トレーダーの間に広まってしまえばすぐに使えなくなります。
こういったことを踏まえたうえで、バイナリーオプションを始めるかどうかの検討は慎重に行うことをおすすめします。(執筆者:貝田 凡太)