遺言を作成するときに避けて通れないのが遺言執行者の問題です。
公正証書遺言作成について専門家に依頼したら「遺言執行者はどうしますか?」と聞かれた
など、よくあるケースです。
今回は、そもそも何のために遺言執行者がいるのか、誰がなれるのかという基本的なところを説明します。
目次
遺言執行者は相続人全員の代理人

遺言執行者は、故人(被相続人)の最後の意思表示である遺言書を、その内容どおりに実現するために存在する人です。
「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする」ことができる法的権限を持ち(民法第1012条1項)、相続に関しては「相続人の代理人とみな」されます(同第1015条)。
本来遺言執行者は遺言を書いた被相続人の代理人といえそうですが、亡くなった人を代理することはできないので、法律上全相続人の代理人と位置付けたのです。
なので、相続人の意見や要望に従う必要はありません。遺言どおりの相続や遺贈を実現するために邁進すれば良いのです。
遺言執行者は遺言で指定しておく
遺言作成者は、予め「この人なら相続手続き業務を任せられる」と信頼する人を「本遺言の執行者として○○を指定する」などと遺言書に書いておきます。
人物を特定させるため、名前だけでなく住所も記しておく方が良いでしょう。
あるいは直接指定せず、「執行者の指定は△△に委託する」と書いておくこともできますが、回りくどいので実際に使用されることはほとんどなさそうです。
また、「○○が執行者になれない場合は△△に」と順位を決めたり、一度に複数名を執行者に指定したりすることもできます。
もちろん、遺言執行者を指名しなければならないという決まりはありません。指定がなければ相続人全員で相続手続きをすることになります。

遺言執行者の業務
遺言執行者になった人はまず、被相続人の預貯金や不動産などの相続財産を調査し、財産目録を作ります。
次に法定相続人を戸籍などで確認し、相続人全員に財産目録を交付します。
その後、相続財産を適切に管理しつつ、不動産や預貯金の名義変更、債権の取り立て、債務の弁済などを行い、遺言内容を執行していきます。
全て執行が終了すれば、その旨を相続人に通知します。
遺言執行者になれる人
遺言執行者は未成年と破産者以外であれば誰でもなれます(同第1009条)。
もちろん相続人のうちの1名を指定しても問題ありません。
ただし、遺言内容によっては他の相続人から邪推を受けて後にしこりを残す怖れがあること、執行業務が複雑で荷が重い場合があることなどから、弁護士や行政書士などの専門家や法人(銀行など)を指定することも多いです。
遺言執行者についてざっくりと説明しました。次回以降、その必要性や費用について引き続き解説していきます。(執筆者:橋本 玲子)