毎月のお仕事の成果として支払われる給与の明細を確認してて、
他の3つの手当は何となく分かるにしても、業務手当って、何に対する手当なんだろう。
あれ、そういえば残業手当って書いてない…。」
このような疑問をもったことはありませんか。
今回は、そのような手当の仕組みと注意点について考えてみましょう。

目次
業務手当の正体とは
会社から支払われる給与は、大きく基本給と諸手当に分けられます。
そして、手当の多くは「ある条件を満たすと支給される」ものです。
「家族手当」なら一般的に、扶養する家族がいる場合に生活補助の意味合いで支給されますが、業務手当のように、一見すると支給される条件が分からない手当というものもあります。
そのような手当が残業手当として支給されているケースが多いです。
残業手当は本来、実際に残業した時間の積み重ねに対し支払われる手当ですが、最近では、「あらかじめ〇時間分の残業手当を毎月支払う」という形で支給するケースも一般的になっています。
このような支払い方法を「定額残業代制」といい、これを支払うときに、職務手当とか業務手当といった名称を用いています。
定額残業代制のメリットとデメリット
定額残業代制は、近年の働き方改革の影響もあり「残業時間の削減」を目的として導入するケースが見受けられます。
これは、労働者側にとってもメリットがある場合があります。
例えば、残業20時間分の残業手当を定額支給するとき、本人の実際の残業時間が10時間であっても20時間分が支給され、後から「返せ!」と会社から言われることはありません(違法です)。
つまり、本人が頑張って効率よく仕事をこなせば、余暇を楽しみつつ手当をもらえるというメリットが生まれるのです。
一方で、これは労働法で明確に認められた支払い方法ではなく、裁判を通じて形作られてきた制度であることから、メリット以上にデメリットが多く存在しています。
デメリットの典型的なものとしては「残業代が正しく計算されていない、計算方法があいまいで確認できない」ことが挙げられます。
これは全て、会社が定額残業代制が認められるための要件(次の(1) ~(3) の3つの条件)を満たしていないことが原因です。
(2) 定額残業代の「金額」と「何時間分の残業手当に相当するか」を明示すること
(3) 実際の残業代が定額残業代を超えた場合には、「差額を支給する」旨を明示すること
これら(1) ~(3) は通常、会社の就業規則に記載しなければならないので、自身の給与明細とあわせて確認しておくとよいでしょう。
あなたの会社は大丈夫でしょうか

会社が定額残業代制が認められるための要件を充たせないのは、そこに誤った認識を持っているからです。
特に大きな誤解に、定額残業代制を導入することで「時間外労働の実態に関わらず、残業代を一定額に抑えられる」というものがあります。
もし万が一、あなたのお勤めの会社がそのような考えを持っているとしたら、あなたは知らず知らずのうちに損害を被っているかもしれません。
確認方法
ここでは具体的に(1) ~(3) を満たさない悪例から考えてみてみましょう。
まず(1)、(2) については、就業規則上「業務手当2万円の一部に定額残業代を含む」とか「業務手当2万円に1か月20時間分の残業代を含む」といった表現はアウトです。
業務手当2万円の全額が定額の残業代なのか、残業代の単価計算が正しいのか確認できないからです。
仮に、時給単価1,000円で計算した結果をもとに考えてみましょう。
計算例
2. 1,250円 × 20時間 =2万5,000円
この結果から、少なくとも「時給単価1,000円以上の人は、残業代が少なく支払われている」ということがいえるでしょう。
さらに(3) について考えてみましょう。
時給単価1,000円の人が実際に働く職場では、毎月一定して10時間しか残業がなかったとします。
実際に支払われる残業代は1万2,500円(1,250円 × 10時間)なので、業務手当2万円の方が多く支払われていることになり違法とはいえません。
しかし、計算例と同じ20時間ならば、差額5,000円を会社は支払わなければなりません。
もし未払いがあったら、支払ってもらいましょう
残業代が少なく計算されていたり、差額が生じているにも関わらず支払いを受けていない部分は「未払い残業代」として会社に請求ができます。
しかし未払いの疑いはあっても、会社での人間関係や退職の危険を考えて「泣き寝入り」を選んでしまいたくなることもあるでしょう。
そんなときは、お勤め先の地域を管轄する「都道府県労働局」に相談してみましょう。
都道府県労働局には労働者個人用の相談コーナーが設けられており、匿名で相談対応をしてくれる仕組みになっています。
こうした仕組みを活用して、自身の大切な権利を賢く守っていくことができます。(執筆者:今坂 啓)