今回は、世界的に進む金利低下局面について各国の現状と、今後の注目点について解説していきたいと思います。

目次
2020年の米国金利は据え置きがメインシナリオ
米国は、2019年に3回の利下げをしており、現在のFRBの政策金利は1.5%~1.7%と低水準を維持しています。
これは米中貿易戦争により景気後退局面が意識されたための措置であり、現在第1フェーズ合意を受けたことでその懸念は払しょくされつつあります。
米雇用統計を見ても失業率は歴史的な低水準を維持できています。
このことから、FRBは「2020年は金利を据え置く」というのが市場のメインシナリオとなっています。
今年の11月には大統領選が控えていることから、具体的な方向性を再度検討するのは選挙後になる可能性が高いと言われています。
しかし、米景気への楽観に傾く市場とは真逆の予想も出てきています。
スイス金融大手UBSのエコノミストであるカーペンター氏は、まだ撤回していない対中関税の影響による景気減速懸念および、米国小売業の市況悪化を理由に、FRBは「2020年に3回利下げする」との予想を打ち出しています。
これより、メインシナリオだからと言って、相場を楽観視しすぎるのにも注意が必要なものと思われます。
新興国の政策金利は歴史的な水準まで低下
米国と足並みをそろえる形で新興国も利下げを連続で行っており、歴史的な低水準まで金利は引き下げられています。
一般的に、米国が利下げすると高利回りである新興国にとって有利とされていますが、将来的に米国が利上げを行ったとき、利上げ余地がないとそれに対抗することができず為替市場が混乱することを恐れているのです。
現に、2018年には米国の利上げに伴う新興国通貨不安により、多くの新興国が自国通貨防衛のため利上げを続けました。
その時の経験で、各国は過去最低水準まで利下げを行うことで有事に備えているのです。
しかし、利下げスパイラルにも限界論が出始めてきており、現在のブラジルの金利は下限近いと言われ、インド中銀は前回の政策決定会合で市場の予想と裏腹に金利据え置きを決定しました。
これにより、金利の低下が限界に近付いているとの観測から、新興国通貨は円安方向に転じています。
また、米国株式市場が史上最高値を更新していることから、セルインメイ(Sell in May)が今年当てはまるかどうかにも注目が集まるものと思われます。

大統領選以降に相場の転換点あり
以上より、米国発の世界的な金利低下局面は、新興国の政策を見ても限界に近づいてきています。
2020年の米国の政策金利は据え置きとなるのがメインシナリオであることから、大統領選以降に相場の転換点を迎える可能性が高くなっています。
また、主要国の利上げの順番にも注意が必要です。
「米国 → 欧州 → 日本」の順番に利上げは行われる可能性が高いため、欧州が利上げをした際には日本の株式市場への影響を考慮する必要があるでしょう。(執筆者:白鳥 翔一)