首都圏マンション価格はタワマンを中心に高値で推移しており、これを機会に、より条件の良いタワマンに買い替える動きが活発化しています。
そして、売却したタワマンで利益が1,000万円出たと言うのですが、それは税金や仲介手数料を加味した実際の数字なのでしょうか。
今回は、不動産を転売すると高い税金がかかる事実をご紹介し、買い替えを正当化する自分と向き合っていただけたらと思います。
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目次
1,000万円程度では、利益はほとんど発生しない
例えば、5,000万円で買った物件が3年後に6,000万円で売れたとしましょう。
この場合、簡略化した計算式では
の利益が出ているように見えます。
しかし、まず不動産を売却するときに不動産仲介会社に依頼するのが通常ですので、即算式で
がかかります。
この費用は譲渡費用に組み込めますので、実際には
の利益です。
そして、不動産の譲渡所得の計算では、不動産の所有期間ごとに税率を大きく変えています。
短期譲渡所得
売却した年の1月1日現在で「所有期間5年以下」
税率 所得税30%、住民税9%(復興特別所得税は加味せず、以下同じ)
長期譲渡所得
売却した年の1月1日現在で「所有期間5年超」
税率 所得税15%、住民税5%
買い替えが長期譲渡所得に該当すれば、譲渡所得から最高3,000万円控除する特例がありますが、短期譲渡所得は高い税率だけです。
そして、上記のタワマン転売はほとんどが短期譲渡所得に該当すると考えられることから、先の事例での譲渡所得税は317万円にもなります。
さらに、住宅ローンも残っていると考えられることから、不動産登記で抵当権抹消は売主が負担しなければならず、数万円程度はかかります。
ここまで見てきただけでも、1,000万円の利益が500万円程度に圧縮されています。
ここから、買い替えた新築マンションの諸経費として、300万円程度、引っ越し費用なども考えると、最終的な利益は100万円程度あれば良いほうです。
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取得したら10年、住み替えるなら賃貸が賢い選択
およそ不動産の値上がりを経験していない世代にとって、自分のタワマンが値上がりしたらうれしくなる気持ちはわかります。
しかし、そのような時は買い替えるタワマンも値上がりしているので、買い替えは得策とは言えないのです。
むしろ、住宅ローン控除が終わる10年をめどにすれば、買い替えても長期譲渡所得に該当し、3,000万円までの利益はなかったことになります。
そして、頻繁に住み替えたいのであれば、最近続々できている高級賃貸マンションを選択すれば良いのです。
不動産の取得においては何かと計算が大ざっぱになりがちですが、その辺りをきっちりすることで、賢い選択ができるような気がします。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)