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「労災保険」とはどういう保険か?
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「労災保険」は、正規雇用者、いわゆる正社員だけを対象とした保険ではありません。
契約社員やパート、アルバイトなどの非正規雇用者も、労災保険の対象です。
正社員と同じように、法の定めにしたがって、労災保険の給付を受けられます。
労災保険は、
にあります。
この「労働者」に、正社員やアルバイトなどの雇用形態による区別はありません。
正社員もアルバイトも、等しく労働者として扱われます。
雇用形態がどうであれ、働いている事業所が労災に加入しているかぎり、労働者災害補償保険法に基づいて労災の保険給付を受けられ、基本的に労働者を1人でも雇用している場合、事業主は労災に加入しなくてはいけません。
労働者がいる以上、その事業所は労災に加入しているはずです。
労災とはどういう災害を指すのか?
労災には、「業務災害」と「通勤災害」の2種類があります。
どういう災害なのか、それぞれ、もう少し具体的にご説明しましょう。
業務災害
業務災害とは、業務上の事由によるもの、災害と業務との間に一定の因果関係があるものを言います。
たとえば、次のようなケースが考えられます。
・ 建設現場で働いている最中に、足場から転落して、ケガをした
・ 調理場で働いている最中に、床が濡れていたために足を滑らせて転び、ケガをした
通勤災害
通勤災害とは、就業のために、合理的な経路および方法で通勤する間に起きたものを言います。
この「通勤」には、次の3パターンがあります。
パターン2:就業場所から別の就業場所への移動
パターン3:単身赴任先の住居と帰省先の住居との往復
たとえば、次のようなケースが考えられます。
・ 出勤中、駅の階段で転んで、ケガをした
・ 満員電車の中で足を踏まれて、ケガをした
労災保険にはどういう給付があるのか?
すでにご説明したとおり、労災保険は、労働者の負傷、疾病、障害、死亡などに対する保護のためにあります。
また、被災した労働者の社会復帰を促したり、労働者の安全・衛生の確保を図ったりすることも、目的としています。
そのため、労災保険の給付には、大きくわけて「保険給付」と「社会復帰促進等事業」があります。
給付が行われるのは、次のような場合あるいは事業です。
保険給付
・ 療養のため休業する場合
・ 障害が残った場合
・ 被災労働者が死亡した場合
・ 常時または随時介護を要する場合
・ 脳・心臓疾患に関連する異常所見がある場合
・ 石綿による健康被害で死亡した場合
社会復帰促進等事業
・ 社会復帰促進事業
・ 被災労働者等援護事業
・ 安全衛生確保等事業
労災の保険給付はどうやって請求すればいい?
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労災の保険給付は、労働者が自分で請求できます。
請求する相手は会社ではなく、会社を管轄する労働基準監督署(労基署)です。
労基署ってどこにあるの?
厚生労働省のホームページには、「全国労働基準監督署の所在案内」が掲載されています。
労基署の所在地や電話番号だけでなく、管轄地域も書かれていますので、どの労基署に行けばいいか、すぐにわかるはずです。
保険給付の請求書も、厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
記載例のPDFもありますので、労災保険の専門知識がなくても心配はいりません。
会社が労災の証明をしてくれないときは、どうすればいい?
保険給付の請求書には、事業主の証明が必要ですが、事業主が労災の証明を拒むことがあります。
拒むのは、労災を隠したい、あるいは事業主の誤解や知識不足が原因かもしれません。
事業主や、労災の業務を担当する社員が、正しい法知識を持っているとはかぎりません。
パートやアルバイトは労災の対象ではないと思い込んでいる人もいるかもしれません。
証明を拒む原因が労災についての誤解や知識不足なら、その点を指摘してきちんと証明をしてもらいましょう。
それでも証明を拒まれたとき
保険給付の請求をあきらめなくてはいけないのでしょうか?
そんなことはありません。
労災の保険給付は、事業主の証明がなくても請求できます。
労基署に請求書を提出する際、事業主に証明を拒まれたことを伝えてください。
請求を認めるかどうかは、事業主ではなく労基署の判断です。
事業主の証明がないからといって、労災の保険給付をあきらめる必要はありません。(執筆者:社会保険労務士 嵯峨 朝子)