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2020年度本予算案の中身
日本政府は、昨年12月に2020年度の予算案を閣議決定しました。

【歳出】社会保障費と公共事業費が増大
歳出は、2019年度当初予算比1.2%増の102兆6,580億円と、2年連続で100兆円を上回りました(8年連続で過去最高を更新)。
その中でも伸び率が高いのは社会保障費(5.1%増の35兆8,608億円)です。
消費増税の財源を高等教育や幼児教育・保育の無償化に充当した影響が出ています。
もっとも2020年度は、第二次世界大戦の終戦年生まれの人が75歳になる年にあたり、前後の年より人口が少ないため、医療・介護費の伸びが抑制されるという特殊要因があります。
そのため、来年度以降は一段と社会保障費が増大することには注意を要します。
その他の歳出項目では、近年の自然災害を受けた国土強靭化策に関連する公共事業費が7兆円弱と高止まりしているのも注目に値します。
【歳入】過去最高の税収を見込むものの借金頼みは変わらず
歳入については、以下のように見込まれています。
・ 新規国債発行額は10年連続で減少(0.3%減の32兆5,562億円)
しかし、歳出を賄うにはほど遠く、借金頼みの状態からの脱却は見えてこない状況です。
予算案(2019年度補正含む)から見る有望投資対象
2019年度補正予算、2020年度本予算で注目すべき点は、
2020年度は、近年増加している自然災害に対する3年間の緊急対策の最終年度となっており、足元の公共事業費は高止まりしています。
そのため、これらに関連する企業の業績は押し上げられる可能性が高いと思われます。
具体的に、「国土強靭化」「防災・減災」「自然災害時の停電予防」などの観点から、以下のような企業が有望です。
・ 高速道路や橋梁の補修・補強、道路の法面工事に特化した企業
・ 電柱の地中埋設(無電柱化)関連企業
公共事業といえば、ゼネコンといわれる総合建設業(厳密には総合請負業)が注目されがちです。
特に2020年は東京オリンピック・パラリンピックの開催年であり、なおさらゼネコンに目が行きがちです。
しかし、予算案から見た有望企業という意味では、特定の分野に特化した上記のような企業群へ投資する方がパフォーマンスは良くなると思われます。

2020年度予算案の注意点
2020年度予算では、2019年10月に実施した消費増税により過去最高の税収となる見込みです。
しかし、税収の算定基礎となる政府の2020年度の経済見通しは、実質の国内総生産(GDP)伸び率が1.4%と非常に強い想定になっています。
民間のエコノミストの平均が0.5%程度の成長、1月20日に発表されたIMF(国際通貨基金)の見通しでも0.7%成長と予測されており、いかに政府の見通しが強気になっているかが見て取れると思います。
政府の1.4%成長というのはほぼ不可能な数値といってよく、税収が想定ほど伸びない可能性が高いと思われます。
借金に頼る財政運営は、いずれどこかのタイミングで破綻をきたすことになります。
これからも日本の財政には注意を払っていただきたいと考えています。(執筆者:土井 良宣)