成年後見人制度の利用につき、昨年(2019年)3月に最高裁判所が、
という見解を出しました。
ちなみに、後見人に選ばれるのは大体親族3割、弁護士や司法書士などの専門職後見人が7割というのがこれまでの割合でした。
今回の最高裁判所の指針が何を意味するかを考えていきましょう。
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法定後見人制度に関する誤解

先日ネット上に、
と嘆く妻の記事が載っていました。
ざっくりと目を通しただけで正確ではありませんが、それに対するコメントで多かったのが、
という拒否反応的なものでした。
成年後見人制度は利用したい、したくないというものではなく、認知症などで判断能力が低下した人が一定の法律行為をするために欠かせない制度なのです。
本人名義の口座からお金を引き出すのは、「金融機関に存在する債権を請求する」という本人にしかできないれっきとした法律行為です。
そのため銀行などは、本人の意思で引き出しているかについて疑問が生じれば一切応じなくなるのが当然で、後見人(または保佐人、補助人)をつけなければたとえ配偶者といえどもどうしようもないのです。
見知らぬ第三者がいきなり後見人になるのは納得しにくい

とはいえ、
という気持ちは理解できます。
もちろんきちんと業務を行っている後見人が大多数であり、報酬額は被後見人の財産状態を見て裁判所が決定するということもあって必ずしも高額だとはいえません。
しかし、特に同居の親族が「自分を後見人に」と希望したにもかかわらず、第三者を後見人とされた場合などは納得がいかないのではないでしょうか。
なぜ裁判所は「親族が望ましい」としたか
成年後見人制度が誕生して20年たちますが、名前はかなり知られてきたものの、利用実績は思ったほど伸びていないのが現状です。
上記のような実情も大きな要因となっているでしょう。
そこで、最高裁判所としては利用をためらわないでほしいというアピールを、最初に挙げた見解で含んだのだと考えます。
ただ、今後親族が後見人となる割合が増えるかはまだ不透明です。
また、後見人のメイン業務である財産管理は、親族の場合、相続人の数が多いとあらぬ疑いをかけられるなど精神的に大変なこともあります。
個人的には「親族に…」という見解よりも成年後見人制度の必要性、重要性をしっかり理解してもらい、納得したうえで利用してもらえるよう認知活動をした方が良いのでは、というのが正直なところです。(執筆者:橋本 玲子)