アスベスト(石綿)は安価で優れた断熱性や、鉱物であることから経年による劣化が少ないといった特徴を有しており、建物の建材や船舶などに広く使用されていました。
しかし、吸入により肺がんや中皮腫などの呼吸器系の疾患を引き起こす恐れがあります。
平成16年10月1日から製造・使用が禁止されました。
健康上のリスクから、解体などに伴い生活環境中へアスベストが飛散してしまうことがないようさまざまな規制が行われていますが、対象は主にビルや工場などの比較的規模の大きな建造物に限られていました。
しかし、規制強化により対象が民家にも広がる可能性が出てきました。
今回はアスベスト飛散対策の規制強化に伴う影響について解説していきます。

目次
どこで使われているのか
アスベストは主にセメントなどと混ぜて使用され板状に成形したものと吹き付けて使用したものに大別され、天井や壁や間仕切り材や鉄骨の耐火被覆などに使用されていました。
住宅の場合は主に鉄骨造のマンションなどに使用されており、木造住宅にはあまり使用されることはありませんでした。
しかし、温水管の断熱材や金属屋根を使用した駐車場や鉄階段が併設されている場合は使用されている可能性があります。
どのような対策が必要なのか

規制強化により床面積が80平米以上の建物の解体工事と請負額が100万円以上の改修工事に拡大され、これらの工事を行う場合は労働基準監督署に事前届け出を行う必要があります。
この届出に際し、アスベストの使用の有無について明らかにする必要があります。
図面などから使用状況の確認が取れなかった場合、成分分析調査を行って使用状況を確かめる必要が生じます。
成分分析は1回につき数万円から十数万円の費用がかかる上、アスベストが使用されていた場合には封じ込めのための対策費用や解体で生じたゴミの処分費用も上乗せされ費用負担が大きくなることが予想されます。
解体や改修工事を予定している場合は早めに対応を
段階的に強化されてきたアスベスト規制について、ついに対象が一般住宅に及ぶ見通しとなってきました。
規制が強化された場合、アスベストの使用状況の確認費用や使用されていた場合は封じ込め対策費用などが上乗せされる恐れがありますので、解体や改修工事を予定している場合は早めに対応することをお奨めします。
また今後中古住宅をリノベーションし、居住として提供する場合や、相続などで入手した古民家を解体・改修する場合は費用負担の増加や手続きの増加を見込んで予定を立てていく必要もあります。(執筆者:菊原 浩司)