自分の財産を誰かに移転するにはさまざまな方法がありますが、どの方法が自分の事情には向いているのか、得策なのかを判断するには、一見似ているように思える2つの制度の違いを知っておく必要があります。
まずは「相続」と「生前贈与」の違いから説明します。

目次
相続は自動発生 生前贈与は契約で発生
「生前贈与」→ 自分の存命中に自分の財産を相続人などに移転させること
それぞれ一言でいえば上記のようになりますが、
相続 → 法律上、本人の死亡により有無を言わさず開始する
生前贈与 → 贈与契約という契約の一種で、本人の贈与の意思だけでなく、相手がその財産を授与する意思を示すことで効力が発生する
時々生前贈与の代わりに「生前相続」という言葉を用いている説明を見ますが、仕組みを混乱しがちなので正しい用語とは言えません。
参考:民法第549条
相続は相続税、生前贈与は贈与税
生前贈与を検討するのは、自分の財産がそのまま相続されると相続税がかかるので節税を考えて、という人が大部分だと思いますが、当然のことながら、財産を取得した原因によって、支払う税金の種類が変わります。
知られているのは「年間110万円までの贈与は非課税」とされることで、例えば親が2人の子に10年間110万円ずつ贈与していけば計2200万円分相続財産を減らせます。
贈与契約は
「お願いします」
と口頭だけでも成立するので、気軽に取り入れられます。

110万円以上の贈与があった場合は贈与税を要申告
相続税の申告と納付は相続開始から10か月以内とされていますが、贈与税は2月1日から3月15日までの期間に、前年の1月1日から12月31日までに贈与された額につき申告と納付をする必要があります。
生前贈与は必ずしも節税にならない場合も
【不動産を生前贈与する場合】
移転登記にかかる登録免許税は固定資産税評価額の2%かかります。
相続登記であれば0.4%ですから、仮に不動産評価額が1,000万円なら、
相続 → 4万円
とかなり違ってきます。
それに加え、贈与税と場合によっては受贈者に不動産取得税がかかる場合がありますから注意が必要です。
情報収集が大切
不動産であっても配偶者への贈与であれば、一定の条件はありますが、最高2,000万円(不動産評価額)まで贈与税が免除されます。
不動産取得税にも同様に控除の特例があります。
また、生前贈与ではありませんが、民間の死亡保険金の非課税額を利用して節税もできますので、どのような方法が適しているかについては、税理士などの専門家にまずは相談してみましょう。
案外シンプルに相続税を払っても、それほど差が出ないかもしれません。(執筆者:橋本 玲子)