今年の1月末、イギリスはようやくEU(European Union:欧州連合)から離脱しました。
次のプロセスにおいては、EUや他の国と自由貿易協定を今年の12月末までに締結します。
しかし、実際に12月末までに決着できるかは不透明で、これが長期的に特にイギリス経済へ悪影響をおよぼす可能性があります。
不安要素は貿易関係だけではなく、他にはイギリス国内の分断などがあります。
特に、投資信託などを介してイギリスやEUの債券や株を購入している方は、このような情報について定期的にチェックしておくことをお勧めします。
そこで、今回の記事ではブレグジット後のプロセスや注目するべき点について解説します。

目次
イギリスはEUから完全に離脱したわけではない
3年以上かかりましたが、ジョンソン首相率いる保守党が大勝利し、ブレグジット関連法案が今年の1月に成立しました。
その後1月31日にイギリスはEUから離脱しました。
しかし、実際には完全に離脱したわけでありません。
イギリスは国として、今年の12月末までEUのルール下で運営されることになります。
したがって、現時点ではイギリスの状況は離脱前とほぼ同じです。
ただし、その間イギリスはEU議会に政治家を送ることができないため、EUの議会決定に関われません。
そのため、ジョンソン首相は12月末までに必要な手続きを終わらせると述べましたが、後述するようにあまり現実的ではないかもしれません。
今年中にEUとの交渉が終わらなければ約2年間の延長が認められています。
イギリスはEUや外国と自由貿易協定を締結する必要がある
イギリスがEUに加盟していた時は、イギリスが独自にEU圏外の国と貿易協定の交渉・締結を行なっていたわけではありません。
EU圏外の国との交渉はEUの代表によって行われるため、EU加盟国には共通の貿易協定があります。
したがって、イギリスがEUから離脱すれば貿易協定がない状態になり、イギリス自身が交渉して協定を締結しなければなりません。
イギリスの最大貿易相手国はEUであるため、EUとの自由貿易協定(FTA, Free Trade Agreement)の締結が重要となってきます。
貿易協定締結までに平均で約2年かかるとされているので、与えられた期間内で自由貿易協定を締結させるのは非常に難しいでしょう。
もし自由貿易交渉が決裂すれば、WTO (World Trade Organization: 世界貿易機関)のルールに基づいて関税が導入されることになります。
そうなると、特にイギリス経済への打撃となり、イギリスの国民生活だけでなくほとんどの企業に影響が出ます。
筆者の友人がイギリスに住んでいますが、やはり先行きが見えないので不安だそうです。
ブレグジット後の長期的な影響

EU離脱派とEU残留派との間での分断はまだ残っていますが、それ以上に深刻なのはスコットランドの独立問題かもしれません。
イギリスの正式名称はUK(United Kingdom)であり、イングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズで構成されています。
特に、スコットランドは独立をしたがっているのは有名です。
2016年に実施されたEU離脱を問う国民投票の結果、イギリスとウェールズでは離脱派が過半数でしたが、スコットランドと北アイルランドでは残留派が過半数でした。
つまり、結果的にスコットランドに独立の根拠を与えることになってしまいました。
スコットランドのスタージョン自治政府首相は、スコットランドの独立を問う国民投票を実施しようとしましたが、イギリス政府に拒否されました。
今後、特にスコットランドにおける独立運動の勢いは増すでしょう。
実際に独立してしまったら、イギリスは国としてかなり弱体化してしまいます。
イギリスなどの株式市場への影響
1月末のブレグジット前後においては、イギリス国内ではお祭り騒ぎでしたが、筆者が確認した限りでは株式市場などは冷静であり特に大きな影響は見られませんでした。
現時点では、新型コロナウイルス感染が特に影響しており、乱高下がしばらく続きそうです。
しかし、今年の後半にはブレグジット関連(特に自由貿易協定の締結に関すること)の影響がイギリスの経済や株式市場で見られる可能性が高いので注意が必要です。
特に、投資信託を介してイギリスの代表的なインデックスであるFTSE100などに投資している方は、イギリスあるいはEUに関する情報を定期的にチェックしておくことをおすすめします。
FTSE100は下落し続けるかもしれませんが、逆にこれは安く買えるチャンスです。
イギリスが完全にEUから離脱すれば、市場は安心して株価は急騰するかもしれません。(執筆者:小田 茂和)