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保険会社が破綻したら

生命保険会社が経営破綻してしまったら、どうなるかご存じですか?
一般的な企業が経営破綻してしまったときは、「再生」か「破産」のどちらかを選択し、保有資産の整理が行われます。
もし、生命保険会社が破綻して同様の手続きが行われたなら、「保険契約」は全て処分されてしまうでしょう。
保険契約者は、いくらかの清算金を受け取ることはできるでしょうが、「保険契約」は消滅してしまいます。
今までの積み立てが無駄になるばかりか、そのときの年齢や健康状態によっては、もう別の保険に新規加入することができない可能性もあります。
そのような事態を防ぐために、保険契約にはセーフティネットが用意されています。
それが、生命保険契約者保護機構です。
「生命保険契約者保護機構」
「生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」)」は、平成10年(1998年)12月1日に設立されました。
当時、日本では「バブル経済の崩壊」を迎えていて、多くの企業が経営破綻を起こしていました。
銀行や証券会社などの金融企業も次々と破綻し、保険会社も例外ではありませんでした。
そこで、保険事業を健全に維持するための法規改革が行われ、保険契約者を守るための「保護機構」が誕生しました。
保護機構は何をしてくれるのか
破綻保険会社が保有する「保険契約」の移転先となる「救済保険会社」を募ります。
多くの場合、救済保険会社は破綻保険会社を吸収合併し、保険契約を引き継ぎます。
保護機構は、それらの手続きが円滑に進むための資金援助を行います。
もしも、救済保険会社が現れなかったときは、保護機構が出資をして「承継保険会社」を設立し、そこに保険契約を移します。
保護機構自らが、保険契約を引き継ぐこともあります。
保護機構は、もしものときのために「保険会社がかけた保険」と言えるでしょう。
保険契約者に与える影響
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保険契約者にとって「これで一安心」とはいきません。
保護機構による補償は、保険契約の「責任準備金90%まで」です。
責任準備金とは、将来の保険金・給付金・年金などの支払いのために、保険会社が積み立てているお金のことです。
つまり、責任準備金の削減は「保険金の減額」につながる可能性があります。
また、運用利率が見直され、終身保険・年金などの長期的な貯蓄保険は、「約束通りの金額」を受け取れなくなります。
解約したくてもできない可能性
破綻から救済保険会社への契約移転中、また移転後しばらくの間、保険契約者に対する事務手続きは停止してしまいます。
保険金や給付金の支払い請求は行えますが、それ以外の変更手続きや解約手続きなどはほとんど行えません。
また、契約移転が完了しても「早期解約控除制度」が適用され、一定期間中の解約は「解約返戻金」が削減される可能性もあります。
このように、保険会社が破綻しても保険契約は守られますが、契約者が全くダメージを受けないわけではありません。
できるだけ「長続きする保険会社」を見つけておきたいところですが、どうやって見分ければいいのでしょうか。
つぶれない保険会社を見分けるポイント
保険会社の公式サイトでは、「健全性」、「経済性報告」、「ディスクロージャー」などの名目で、経済情報を含むさまざまなデータを公表しています。
その中から、保険会社の経営状態を見極めるために有効な項目を4つご紹介しましょう。
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(1) 基礎利益
超低金利が続く現在では、過去に販売した「利率がいい商品」を運用することによって、どうしても運用収益の不足分(逆ざや)が出てしまいます。
「基礎利益」は、逆ざやを埋め合わせた後の数値なので、これが十分に確保できている会社は、逆ざやを上回る利益を得ているということが言えるでしょう。
(2)実質純資産額
この数値がマイナスだと、「債務超過」に陥っているということで、金融庁から業務停止命令を下される可能性があります。
十分に確保できているならば、「もしも、今全ての保険金を支払うことになっても大丈夫」と、見ていいでしょう。
(3) ソルベンシー・マージン比率
この数値が200%を下回ると金融庁から業務改善命令が発動されるため、一般的には「200%以上なら健全な経営」だと言われています。
しかしながら、過去に経営破綻した保険会社の多くが破綻直前でもソルベンシー・マージン比率200%以上を保っていました。
参照:「破綻会社のソルベンシー・マージン比率とその後の見直しについて」植村 信保(格付投資情報センター)p5. ソルベンシー・マージン比率の試算(pdf)
単純に自己資本額が多い場合でも比率があがります。
新しく設立したばかりの保険会社などは、自己資本額に対して相応のリスクをまだとっていないことから比率が高い傾向にあります。
ソルベンシー・マージン比率だけに頼るのではなく、他の数値と合わせて見ることが大切です。
(4) 格付け会社からの評価
・ 主に投資向けの情報
「AAA」あるいは「Aaa」が最高位ですが、「A」以上であればリスクは低いと判断されます。
格付け機関によって評価が違う場合もあるので、複数の格付けを見比べてみましょう。
また、不定期に評価が変更されているので、引用ページではなく公式サイトで確認した方がいいでしょう。
評価基準の不透明さから、信用度を疑問視する声もあります。
格付けだけを見るのではなく、上に挙げた数値と合わせて判断することをおすすめします。
保険契約は、10年20年といった長い期間に渡ることがほとんどです。
自分にあった保険を見つけることも大切ですが、健全な経営を行っている保険会社を見極めることも大切です。
安心して保険契約を続けられるように、時には保険会社の経営状態もチェックしておきましょう。(執筆者:仲村 希)