アメリカの大統領選挙の集会でバーニー・サンダース上院議員をはじめ、幾人かは同じような内容の演説をしてしています。
この公約の良し悪しの判断はおいておくとして、アメリカでは学生ローンの返済が生活を圧迫しているのが現実です。

目次
アメリカの学生ローンの金利は高い
2019年末、アメリカの学生ローンの残高合計は1兆5,080億ドル(1ドル = 110円とした場合、約165兆円)と発表がありました。
1人あたりのローン残高にすると、3万ドル(約330万円)です。
学生ローンが中高年層の生活の負担になっており、破産や離婚につながると分析されています。
日本の奨学金と大きく違う点は、金利が非常に高いことです。
日本の奨学金(2種)の金利は0.20~.35%程度であるのに対して、アメリカの学生ローンは7%程です。
私立文系の4年間の学費が約400万円として、返済年数20年にした場合の総返済額は次の通りです。

総返済額は日本の約1.8倍です。
毎月の支払いも約1.8倍ほど多く、家計の負担になりやすいようです。
アメリカの破産申告者の32%は学生ローンの負債を抱えていたという調査報告もあり、アメリカ国民にとって選挙の争点となる問題なのです。
参照元:海外学術動向ポータルサイト
日本の奨学金の利用価値
では、日本の奨学金は利用してもよいのか。
結論からお伝えすると、利用を検討してよいと私は考えています。
金利が非常に低い
一般的には、日本学生支援機構の奨学金を利用すると思います。
日本学生支援機構の奨学金は、1種(無利子型)と2種(利子型)の2つに大きく分けることができます。
1種には学力や世帯の収入などの一定の条件があります。
2種にも条件はありますが、ほとんどの学生が条件をクリアできます。
仮に1種で4万円/ 月、2種で4万円/ 月で4年間分の奨学金を受けたとすると次の通りです。

月々の返済は1万6,284円です。
約400万円を借りて、利息分は20年間で約7万円です。
長期の住宅ローンでも1%ほどの金利となるため、日本の奨学金は借りる学生にとって使いやすい制度だと考えられます。
ちなみに日本にも学生ローンが存在します。
金利は10~17%と無担保のカードローンと同等です。
親の同意なども必要なく、学生が一時的にお金が足りないときに利用する人がいるようです。
私としてはおすすめできません。


万が一のときは免除される
日本学生支援機構の奨学金を利用する場合は、保証人と連帯保証人が必要です。
一般的には親や親戚の方になってもらうことが多いようです。
保証人や連帯保証人になると、本人が返済できなくなった場合に変わりに返済する義務が生じます。
しかし、本人の死亡や精神身体の障害により、労働ができなくなった場合は全額または一部免除となります。
奨学金を利用するうえでの注意点
アメリカの学生ローンと比べて日本の奨学金は非常に低金利なのでおすすめです。
日本の奨学金を利用する際の注意点は3つあります。

注意点1:奨学金は借金だと本人に認識させる
現在の日本の奨学金は貸与型です。
つまり返済する義務があります。
一般的に18歳の時に申し込んで、22歳の10月ごろから返済が始まります。
返済は20年続き、返済が終わるのは40歳前後です。
例えば本人が自己破産した場合、免責となれば通常の借金を返済する義務はなくなります。
しかし、奨学金は返済の義務は残ります。
連帯保証人が支払うこととなります。(アメリカの学生ローンも自己破産しても残るようです。)
奨学金を申し込む際に、しっかりと将来返済する義務があることを認識させましょう。
注意点2:滞納するとブラックリストに
奨学金の返済が始まるのは、一般的に卒業してから半年後です。
毎月決まった口座から引き落とされるので、残高に注意する必要があります。
万が一、滞納した場合はどうなるか。
個人信用情報機関に滞納した情報が登録されます。
すなわち、ブラックリストに載るということです。
ブラックリストに載ると、
・ 住宅ローンを利用できない
・ 場合によってはスマホを分割で購入できない
ようです。
奨学金の返済が厳しい状態になった場合には、すぐに日本学生支援機構に連絡して返済額の減額や停止措置を受けるようにしましょう。
注意点3:親が代わりに返済する際には贈与税に注意
奨学金を利用する人の中には、親が代わりに返済する家計もあります。
金利がとても低いので、教育ローンを借りるよりも経済的です。
親が奨学金を本人に代わって返済するときの注意点として、贈与税があります。
通常、親や祖父母(扶養義務者)が子供の教育費を代わりに支払うことについては贈与税の課税対象とはなりません。
しかし、子供の奨学金を返済することは教育費に該当しない可能性が高いのです。
参照元:国税庁「扶養義務者(父母や祖父母)から「生活費」又は「教育費」の贈与を受けた場合の贈与税に関するQ&A (pdf)」
親が一括返済で年間110万円以上の金額を払ってしまうと、贈与税の課税対象となってしまう可能性がります。
親が返済する場合は年間の返済額が贈与税非課税範囲内の110万円以内になるように注意しましょう。(執筆者:FP2級、一級建築施工管理技士 田中 かな太)