健康保険料や厚生年金保険料の社会保険料は、定時決定という方法で標準報酬月額を算出して毎月の保険料が決まってきます。
厚生年金については保険料が高くても将来の年金額に跳ねてきますので、あまり影響はないかもしれません。
しかし、健康保険については保険料の高い低いにかかわらず掛け捨てで、医療費の自己負担額は同じです。
そのため、保険料はできるだけ少ない負担であるほどお得感があるでしょう。
今回は、社会保険料がどのような方法で決まっていくかとともに、社会保険料の決定のために春先の働き方について注意した方が良いことについて詳しく解説していきます。
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目次
社会保険料の決定方法(定時決定)
健康保険や厚生年金保険の社会保険料は、被保険者ごとの報酬に応じて区分(等級)で設定されている標準報酬月額をもとに、算出されます。
標準報酬月額は健康保険が50等級、厚生年金保険は31等級に区分されていて、等級によって決められた保険料を労使で折半するのです。
この社会保険料を決定するのに重要な役割を果たしている被保険者の標準報酬月額は、基本的には1年に1回定時決定という方法により決定されます。
定時決定とは、被保険者の実際に受けている給与額と標準報酬月額に大きな差がないかを1年に1回、4月から6月に支払われる3か月間の給与を対象に見直しを行うことをいいます。
標準報酬月額の基準となる報酬について
社会保険料は標準報酬月額が大きくなるほど高くなり、小さくなるほど安くなります。
そのため、定時決定で使用する4月から6月の被保険者の報酬を少なくすれば、標準報酬月額も小さくなり保険料が安くなるはずです。
それでは、標準報酬月額の基準となる報酬は、どのようなものが対象になるのでしょうか?
報酬とは従業員が労働の対価として受け取るもので、現金だけでなく現物支給も対象になります。
標準報酬月額の基準となる報酬の例は以下になります。
残業手当や通勤手当などの諸手当
通勤定期券、回数券、食事、食券などの現物支給
社会保険料を減らすには?
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このように、社会保険料を減らすには、
4月、5月、6月の給料のもとになる3月、4月、5月の残業や休日出勤を減らすなどの工夫が必要です。
もちろん社会保険料のうち健康保険料だけ減らすことはできないため、将来の厚生年金の受給額を少しでも増やしたい人にとっては良い方法ではありません。
また、昇給や昇格、給与形態の変更などで社会保険の被保険者の標準報酬月額が2等級以上変動した場合には、随時改定という方法で標準報酬月額を変更する必要があります。
しかし、残業代や休日出勤手当などの非固定的賃金の上下により標準報酬月額が2等級以上変動した場合は、随時改定の対象外です。
このように、3月、4月、5月の働き方で社会保険料が決まってくるケースがありますので、注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士、行政書士 小島 章彦)