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投資主体別売買動向に注目

今回は、コロナショックにより与えられる株式相場の二番底のリスク要因を解説していきたいと思います。
NYダウは、3月23日に安値1万8,213ドルから3月27日高値2万2,646ドルまで短期的に上昇し相場はいったん落ち着きを取り戻したように思えます。
しかし、この買い戻しは主に機関投資家によるものであり、個人投資家の待機資金はほとんど動いていない状態です。
個人投資家の多くは、MMFに資金を現金化して待機させている状態であり、25日までの1週間で3,000億ドル以上の資金流入が続いています。
3月相場では、各国政府の財政出動、中銀による大規模緩和という相場下支えイベントが発生したことにより、
のです。
日銀による量的緩和拡大が相場を支える
今回のコロナショックを受け、各国は大幅な財政出動・緩和策に打って出ており、世界で7兆ドルの量的緩和と5兆ドルの財政出動が行われることになりました。
日銀は、20年3月16日に年6兆円としていた上場投資信託(ETF)の購入目標を12兆円に倍増し、不動産投資信託(REIT)においても従来の900億円から1,800億円に倍増することを決定しています。
これにより、1回あたりのETFの買い付け額は、それ以降2,000億円規模となっており、NYダウが下落しているにも関わらず日銀買付銘柄だけが大幅な上昇に転じる場面が多々見受けられるようになりました。
しかし、買いの主体は個人投資家と日銀であり、海外投資家は売り越しとなっているため、本格的な回復局面とは言えません。
企業決算悪化によるEPS(1株当たり利益)の悪化に注意
今回の企業決算では、新型コロナウイルスの影響により大幅な業績悪化が予想されています。
リーマン・ショック時、TOPIXのEPS(1株当たり利益)は67%下落しており、株価は約4割下落しましたが、今回のコロナショックでは3割の下落で収まっています。
当時の相場環境では、このTOPIXのEPSが減少する前に株価はすでにそれを織り込みながら下落していたため、EPSが下落し始めた段階で株価は底を打ち上昇に転じました。
しかし、今回のコロナウイルスにより企業の業績悪化が長期化するという事態が判明した場合、さらなる下落に備えなければなりません。
ゴールドマン・サックスは、S&P500指数の予想EPSを前年比33%減の110USドルとしており、PER(株価収益率)が23倍強に達してしまうため、そのリバランスが起こることが警戒されています。
機関投資家は下落局面に備えプット(売る権利)を積み上げている
機関投資家は、世界的なコロナウイルス感染者数の大幅増加を受け、これが長期化するリスクに備え大幅にプット(売る権利)を積み上げています。
日経平均の権利行使価格1万6,000~1万7,000円で利益が出るような保険であるプットは、
のかが読み取れます。
米雇用統計のさらなる悪化に注意

3月の雇用統計の非農業部門の雇用者数は前月比70万1,000人減少しました。
市場予想は10万人減であり多くとも25万人減だろうと予測されていましたが、その水準から大幅に下方乖離してしまったことからネガティブサプライズとなりました。
しかし、これを受けた3日のダウ工業株30種平均は前日比360ドル安しか下落しませんでした。
これは、コロナウイルスの影響により失業保険が優遇されていることが一因だと言われています。
NYでは、通常1週間で500ドルもらえる失業保険に優遇措置として7月までは追加で600ドル上乗せされることから、月間4,400ドル、日本円にして50万円もの給付を受けられます。
これにより、これだけ給付金がもらえるのなら働かなくてもいいと考える人が増えてしまっています。
企業側としても、社員を解雇した方が手厚い保証をもらえることができることから、雇用統計の予想を超えた悪化につながっている可能性があります。
しかし、4月の雇用統計は失業保険申請者数が3月28日までの2週間で1,000万件と大幅に増加していることから大幅に悪化する可能性があるため、その動向には注意する必要があります。
コロナ騒動とともに株価を注視
今回の一時的な株式上昇は、投資主体別では中身がそこまでよくなく、今回のコロナショックによる企業の業績見通しがどのような見通しになるかによって相場環境にネガティブに働く可能性が出てきています。
業績悪化がどれだけ長期化するかによって二番底を試す可能性が高くなりますので、十分なリスク管理が必要となります。
また、米国の感染者数が爆発的に拡大してきており、米トランプ大統領も4月4日に「今後1~2週間が感染拡大のピークになる」としていることからその動向には注目しておく必要があるでしょう。(執筆者:白鳥 翔一)