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サヤ取りと変動感覚
株式投資でパフォーマンスを上げるために、変動感覚をつかむことが大切とする意見があります。
この意見はおおむね間違いないものと思いますが、とりわけ株式サヤ取りにおいては、変動感覚をつかむことが特に重要です。
株式サヤ取りでは、2銘柄の価格差であるサヤの動きによって利益を得ます。
2銘柄間の値動きと、そこから生じるサヤの変動感覚を身に着けることによって、その後のサヤの推移が予想できるようになり、サヤ取りに成功しやすくなるのです。
変動感覚を養うために使うツールは、
・ グラフ
の2つです。

場帖について
場帖とは、日々の値動きを記録していく帳面のことです。
日々の値動きは、新聞の株式欄や証券会社のホームページなどで簡単に調べることができます。
しかし、ただ見てチェックするだけではなく、値動きを場帖に記録していくことが大切です。
ただし、記録するとはいっても、Excelなどに記録するのではありません。
あくまでも、ルーズリーフなどを場帖として、手書きで記録することに意味があります。
少なくとも直近6か月くらいの終値を場帖に記録してみましょう。
そうすると、サヤの動きがおぼろげながら見えてきます。
記録する期間が長ければ長いほど、変動感覚が養われます。
場帖の書き方
場帖には、ルーズリーフなどのバラバラになっている紙を用い、片面だけに記録します。
両面ではなく片面だけに記録することによって、場帖を並べて長期間の値動きを見ることができます。
このため、ノートは場帖に不向きです。
場帖に記録するのは、毎日の終値のみとします。
サヤ取りでは2銘柄間の価格差を大まかに見ることが大切なので、始値・高値・安値といった情報はノイズになるだけです。
具体的な記録の方法は、ルーズリーフなどの紙を縦に分割して4つの記録欄を作り、日付、軸銘柄の終値、脇銘柄の終値、サヤを記録します。
おすすめの用紙は、コクヨの金銭出納帳です。
紙質が良く、3色刷りで見やすく、桁の区切りがあって数字も見やすいためです。
具体的には、以下のように記録します。

グラフについて
次に大切なのが、グラフを書くことです。
今の時代、株価のチャートはネットで簡単に取得できますが、これも見ているだけでは変動感覚は養われません。
変動感覚を養うためには、場帖をつけると同時にグラフを手書きすることが大切です。
グラフを手書きするのは、かなり骨の折れることです。
しかし、チャートを見ているだけでは得られなかった感覚が確実に得られます。
これは、実際にやってみると分かるはずです。
サヤ取りの変動感覚を養うには、選んだ2銘柄の終値の折れ線グラフと、2銘柄間のサヤの折れ線グラフの2種類を作成します。
この折れ線グラフは、どちらか一方だけでは不十分です。
2銘柄の終値のグラフだけでは、それぞれの値動きの変動は分かっても、サヤの変動はつかめません。
逆に、サヤ線グラフだけでは、サヤの変動は分かっても銘柄ごとの変動はつかめません。
両方とも作成することで、2銘柄の変動とサヤの変動をつかむことができ、感覚を養うことができます。
グラフの書き方
グラフは、コクヨのB1サイズの方眼紙を用います。
50枚入り・5,000円弱で売られおり、それなりに値が張るのですが、1,000ミリメートル × 700ミリメートルのサイズですから、大きく分かりやすいグラフを書くのに最適です。
グラフは縦長に用い、縦軸は価格、横軸は日付とします。
縦軸の1目盛あたりの値幅は、グラフにまとめる銘柄の株価や、サヤの値幅に応じて決めます。
例えば、終値のグラフを書く場合、株価が1,000円以下の銘柄であれば、1ミリメートルを1円として書き、それ以上であれば株価によって値幅を変えていきます。
サヤ線グラフも基本的に同じです。
サヤの変動幅が‐200円~200円のグラフであれば、
1,000ミリメートル地点を500円
0ミリメートル地点を‐500円
として、1目盛あたり1円のグラフを書けば良いでしょう。
横軸は、2目盛を1日とします。
具体的には、以下のように書いていきます(以下のグラフは、ある期間のミネベアミツミとセイコーエプソンの値動きとサヤの動きを検証したものです)。
【2銘柄の終値グラフ】

【2銘柄間のサヤ線グラフ】

変動感覚を養おう
場帖とグラフを書くことは、手間のかかる地味な作業に思えるかもしれません。
しかし、これによって、驚くほど変動感覚が養われていきます。
変動感覚を養えば、サヤ取りを仕掛けるタイミングも見えてきます。
これは、実際に書く習慣がなければ分かりにくいことですので、ぜひ実践してみることをおすすめします。(執筆者:兼山 艮)