個人事業主やサラリーマンの副業などでも事業が軌道にのり、売り上げが増えてくると税金の問題が頭をもたげてきます。
日本の所得税は所得が増えるほど高い税率を課す「累進課税」」の仕組みを採っているため、個人で多くの収入を得てしまうと多くの税金を支払う必要があります。
そうした場合に節税メリットのある法人化の検討を開始しますが、法人化したことで生じるコストも存在します。
今回は事業を法人化するメリットとコストについて解説していきたいと思います。

目次
会社設立のメリット
ひとことに法人化といっても会社にはいくつかの種類があります。
現在は有限会社の新設ができなくなり、株式会社・合同会社・合名会社・合資会社などが設立されるようになっています。
これらは主に経営の主体や出資者責任などについて差異がありますが、いずれも事業の収入をより税率の低い法人税等に組み入れることで所得税を抑えられます。
しかし、法人化に伴いコストもまた生じてしまうため、売り上げの低い時分はメリットよりもコストの方が上回ってしまう恐れがあります。
法人化のもう1つのメリットは「責任の有限化」です。
例えば個人事業主などは無限責任といわれ、事業で負債を抱え破産してしまった場合は事業主の全ての財産で返済を行う必要があります。
しかし、株式会社と合同会社は有限責任または間接有限責任となっており、出資したお金や資本金などの会社が所有する財産の範囲でのみ責任の範囲を限定できます。
会社設立のコスト
会社設立のためには会社の基本的なルールである定款の作成や認証、登記などの手順が必要となります。
会社の規模などにもよりますが、最低限度のものならば十数万円から設立できます。
また、会社を維持するコストとして代表的なものに法人税等があります。
法人税等は主に「法人税」、「法人事業税」、「法人住民税」で構成され、これらの合計は「法人実効税率」と呼ばれています。
法人実効税率は会社の規模や事業開始年度によって異なりますが、おおむね30%程度となっています。
個人の所得税率は900万円~1,800万円の場合は33%ですので、この区分に該当したら法人化によるメリットが出てくる可能性があります。

換価しにくいメリットも併せて検討
法人化すれば所得税の税率を大きく下げられます。
しかしその反面、税務申告には税理士関与が必要となるほか、法人税などの固定的なコストも多く発生します。
単年度の黒字のみで法人化を行ってしまうと業績の浮沈により税金のメリットよりもコストのデメリットが大きくなってしまうかもしれません。
しかし法人化に伴い信用力が増したり、責任範囲を限定できるといった金額に換算しにくいメリットがあることもまた事実です。
法人化の際は金額的な面だけでなく、こうした換価しにくいメリットも併せて検討していくことが大切です。(執筆者:菊原 浩司)