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新型コロナで、緊急事態宣言
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新型コロナで活動自粛が続いています。
ついに4月7日、安倍首相が7都府県(東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡)へ、初めて「緊急事態宣言」を発令しました。
特に医療崩壊が1番懸念されています。
日本では海外のように都市をロックダウンはできませんが、客足が遠のき、倒産を免れなかったところは多いです。
東京商工リサーチの調査によれば、4月7日18時現在で、
弁護士一任などの法的手続き準備中:23件
で、経営破たんは合計42件まで増加しているとのことです。
倒産19件のうち7件が旅行業で、人の移動を自粛する「コロナ不況」の犠牲になってしまったと言えるでしょう。
経営破綻とまでではなくても、通常時より客足が遠のき、仕事が激減しているのに会社を営業していると人件費やその他事務経費等もかかることから、営業をお休みするところも多くあるようです。
会社自体は営業をしていても、従業員のシフトが減ったり給与が減ったりするところも少なくありません。
特定業種に休業要請を行った東京都、神奈川
現在、特に感染者の多い東京都では、対象を指定して休業要請をしており、都内のパチンコ店、ネットカフェ、カラオケボックス、キャバレー、バー、劇場、映画館、ライブハウスなどは営業したくてもできない状態になりました。
東京都は休業要請に応じた店舗や時間短縮に応じた飲食店などに感染防止協力金50万円、2店舗以上は100万円支給を決めました。
神奈川県では対応を検討中とのことです。
事業主と従業員の「権利」
休業要請をされていない会社などでも、コロナ感染を恐れて客足が減り、従業員の仕事が減った場合、雇う側としては、売り上げの減る中、従業員に給与を払いたくないと感じるのも無理のない話です。
生活のかかった従業員にとっては「あり得ない話」です。
会社が従業員を休ませた場合、従業員には労働基準法上「休業手当」を請求する権利があります。
「休業手当」とは、使用者(会社)の責めに帰すべき理由のために休業した場合労働者(従業員)に支払う手当のことです。
会社が休業手当の支払い義務を免れるのは、従業員を不可抗力で休ませるしかない場合なので、「新型コロナ」は会社にとって不可抗力の事態でしょう。
だからと言って、「緊急事態宣言が出されて休業したから休業手当なんて出さないよ」と、はっきり言いきれないのが事業主(会社)のつらいところです。
会社は従業員を休ませる前に「在宅勤務などで業務に従事させることが可能か」、「他にできる仕事がないか」を検討する必要があります。
また新型コロナで仕事がないから会社が従業員を無理に休ませるのも違法になります。
新型コロナで仕事が激減 まずは有給休暇請求
従業員の立場としては新型コロナ感染拡大により、職場の業績が悪化し仕事が激減した時、または感染拡大が心配だから職場と少し距離を置く日が欲しい時などは、遠慮せず年次有給休暇を請求してみましょう。
前述した「休業手当」は給与のおよそ「6割」、有給休暇は給与の「全額」なので、取れればその方が、従業員にとってはお得です。
新型コロナに感染して会社を休む場合
新型コロナにかかってしまい、会社を休む場合もまず有給休暇請求を先に行ってみましょう。
偏見のあまり、雇止めや解雇の憂き目にあう前に、金銭的に有利なことを交渉してみましょう。
有給休暇が終わったら(または有給を取れなかったら)、在籍していた方が健康保険から傷病手当金が支給される可能性が高いので、例え退職を迫られても簡単に退職はしないことです。
新型コロナで業績悪化で「解雇」「雇い止め」は可能?
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厚生労働省によれば、新型コロナウイルスの感染拡大による業績悪化が原因で職場を解雇・雇い止めされた人と、今後解雇・雇い止めされる予定の人は1,000人超えているということです。
現実的には、特に派遣や有期雇用が雇止めの憂き目に遭いやすいです。
4月から中小企業も含め、派遣や有期雇用を正当な理由もなく、正社員と均等な扱いをしないことは禁止されました。
派遣や契約社員だけ雇止めすることは違法です。
正社員をテレワークで勤務継続させるなら、
必要があります。
休業手当より失業給付の方が有利と考え、600人解雇したタクシー会社
東京の某タクシー会社が突然600人の全社員を解雇しました。緊急事態宣言を受け、タクシーを使う人が少なくなり業績が悪化したことで、営業は一時停止していたとのことです。
休業手当よりハローワークで手続きする失業等給付の方が有利ということで、社員全員を解雇しました。
休業手当は、直近3か月の給与の平均の6割ですが、失業等給付は直近1年間の給与の平均の5割から7割なので、会社の言い分も間違ってはいません。
おそらく会社で休業手当を支払う体力もなくなってしまったのでしょうか。失業等給付なら、支払うのは会社ではなく雇用保険からです。
学生の内定取り消しは、解雇と同じ効力
感染拡大を理由にした学生に対する就職内定の取り消しも出ています。
企業が出す内定は採用希望の応募者に対する承諾と見なされ、内定通知が到着し誓約書を出した時点で労働契約が成立したと見なす判例がありますので、違法な内定取り消しは、企業に対する損害賠償を認めた判例もあります。
ただし、新型コロナ感染拡大で仕事が激減したことで取り消した場合、これが違法な内定取り消しかどうかは、もし裁判になっても難しい判断になりそうです。
内定取り消しになった学生を積極的に雇う会社や自治体もあるので要注目です。
生活支援臨時給付金30万円の条件
当初は「住民税が非課税になる水準まで月収が減少」「住民税非課税水準の2倍以下に月収が落ち込む」という条件でしたが、批判を受け見直しされました。
新しい基準は2~6月の世帯主のいずれかの月収が昨年よりも減少した場合、減少後月収が
扶養親族1人 15万円以下
扶養親族2人 20万円以下
扶養親族3人 25万円以下
2~6月のいずれか1か月間で世帯主の月収が昨年の半分以下になった場合
月収後の月収が
扶養親族1人 30万円以下
扶養親族2人 40万円以下
扶養親族3人 50万円以下
住民税非課税ラインは、地域によって金額が異なるため、わかりやすい金額が基準になったようですが、この基準にも疑問の声はあります。
【30万もらえるケース】
昨年月収100万円だった妻(専業主婦)
2人の子供を扶養する夫(世帯主)は30万円がもらえる
【疑問が残るケース】
去年無収入だった子供1人扶養しているシングルマザーがパートに出た直後に雇止めにあい、収入が元夫からの養育費5万円のみになった場合はもらえないことになる?
筆者個人的にもやや疑問が残ります。
これは絶対基準とは限らないと思うので、手続き方法が分かり次第、「申請してみる」というのも1つの手です。
総務省専用コールセンター:03-5638-5855
社長も大変1:持続化給付金
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・ 中小企業 … 200万円助成
・ フリーランス … 100万円助成
「持続化給付金」といって、前年同月と比べ売り上げが半分以下に減った中小企業に最大200万円、個人事業者(フリーランス)に最大100万円を給付する制度もできました。
中小企業庁が管轄で日本商工会議所が窓口になりそうです。
問い合わせ:0120-60-3999
社長も大変2:小学校休業等対応助成金
「小学校休業等対応助成金」は、
・ 臨時休業等した小学校等に通う子
・ 新型コロナウイルスに感染または感染のおそれがある小学校等に通う子
どちらかの条件を満たした子供がいる労働者(従業員)に、「年次有給休暇とは別枠で有給休暇を取得させた事業主」に対して支払われる助成金です。
受付は開始しており、6月30日までです。
従業員が子供の休校のため、休んだ間に会社が給与全額を支払った場合、最高で日額8,330円を助成します。
正社員・派遣・契約社員・パートなどは問わず、半日単位や時間単位の休暇であっても助成対象です。
当初、風俗業は対象外とのことでしたが、「子供を持つ親の職業差別をするとは…」と疑問が噴出し、風俗業の事業主にも助成金は支給されることとなりました。
名称が似ていますが「小学校休業等対応支援金」という委託を受けて働く個人事業主向けの支援金もあります。
雇用保険関係の助成金になるのではないでしょうか?
手続き方法はこれから決まるとのこと、この2つの助成金の問い合わせ先:0120-60-3999
社長も大変3:雇用調整助成金
従業員も大変ですが、人を雇い給与を支払わなければならない会社も大変です。
極力従業員を辞めさせないための助成金があります。
雇用調整助成金は、事業主(会社)が在籍したまま従業員を休ませて、給与の約6割以上の休業手当を支払った場合に、1人も解雇や雇い止めをしなければ、企業規模により4分の3から10分の9(以前は大企業2分の1、中小企業3分の2だったが3月下旬に変更)まで休業手当の助成を受けられる制度です。
雇用保険に6か月以上加入していない従業員や働く時間が週20時間未満のパートや新入社員も対象者にくわえられました。
雇用調整助成金の申請から支給までにかかる期間は約2か月でしたが、今回は手間のかかる作業を省き、支給までの期間を1か月する予定とのことです。
雇用調整助成金を含む雇用保険関係の助成金申請先は厚生労働省のHPを参考にしましょう。
新型コロナに係る「働き方改革推進支援助成金」にも注目
雇用調整助成金は従業員を休ませ休業手当を支払った場合の助成ですが、休ませるのではなく在宅勤務をさせることを検討中なら、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)の新型コロナに係る特例コースもあります。
令和2年2月17日~5月31日の間にテレワークを新規で導入し、実際に 実施した労働者が人以上いることが条件です。
問い合わせ・申込先は厚生労働省管轄ですが、雇用調整助成金と場所が少し異なりますので要注意です。
社長も大変4:「新型コロナ感染症特別貸付」
従業員向けの制度が多い中、中小企業の社長も会社を守るのは大変なことです。
現金給付の30万円といい、助成金といい、フリーランス向けの助成金といい、すぐに支給されるかどうかは不明です。
「この1か月にお金が入るかどうかが重要」というところもあるでしょう。
中小・ベンチャー企業への支援している日本政策金融公庫では、現在「新型ウイルスコロナ感染症特別貸付」で幅広く融資を実行しており、企業は実質無利子で資金調達もできます。
「最近1か月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している」など条件を満たした場合、最高6,000万円まで貸付を受けられます。
申し込みは郵送でもでき申請期限もないので、問い合わせ(大変混み合っているとのこと)してみてはいかがでしょうか。

「無利子保証人なし」の貸し付けは継続される
中小企業や個人事業主向けでない、困苦する世帯に対する貸し付けも継続して行われていますのでご紹介します。
生活資金に困窮する世帯に対し、「無利子」、「保証人なし」で貸し付ける特例措置が3月下旬から始まっており、それも継続されます。
種類1. 主に休業している人向けの「緊急小口資金」
緊急で一時的な生計維持のためなら最大20万円が借りられます。
返済猶予が最長1年で、返済期間は2年以内です。
種類2. 主に失業者向けの「総合支援資金」
2人以上の世帯が月20万円以内、単身なら月15万円以内で、最大3か月分を借りられます。
返済が猶予は最長1年で、返済期限は最長10年以内です。
2種類とも返済時点で住民税が非課税世帯なら、返済が免除されます。
受付窓口は市区町村の社会福祉協議会(全国社会福祉協議会HP参照、福祉事務所と別組織)です。
市区町村役場と併設か近隣であることも多いようです。
諸外国の「コロナ補償」
日本政府は経済的に影響のない学校の休校要請を先に行い、業種を指定しての休業要請を行いませんでした。
東京都は行ったが、政府は反対しています。
「国からの新型コロナ感染拡大を防ぐための協力」としての休業要請を行うと、「国の都合で休業なのだから補償を!」と言う声が挙がるのを避けているかのように見え、国民に対する補償には消極的な様子です。
外国諸国ではどのような感じなのでしょうか?
・ ドイツで芸術家に60万円相当助成金支給し、従業員5人までの自営業者は3か月で最高106万円相当額を休業補償
・ アメリカでも失業者60万人
・ イギリスで3月分からの従業員給与の8割を肩代わり、フリーランスの所得も支援して休業補償、
・ フランス、イタリア、スイスなど欧州で所得の一定額を国が補償。
新型コロナ感染拡大を防止するために、東京都は特定業種に休業要請を行いました。経済をなるべく犠牲にしない国の方針を念頭においてか、当初より業種の幅が狭まりました。
どちらせよ立場の弱いところにしわ寄せが来ないことを願っています。(執筆者:社会保険労務士 拝野 洋子)