会社員の方は社会保険料として、
・ 厚生年金保険料
が毎月給料から天引きされています。
一方で、この社会保険料の「決め方」は意外と知られていません。
会社に入社したときは入社時の給料の額によって決まりますが、長らく働いておられる方も毎年1回、保険料の見直しが行われています。
これを定時決定(ていじけってい)といいます。
今回は、定時決定時に気をつけたいポイントについて解説します。
目次
社会保険料の計算の仕方

社会保険料は、
(2) その標準報酬月額に保険料率をかける
という方法で計算されます。
保険料を決定するタイミングは、3つあります。
2. 定時決定
3. 随時改定
以下、簡単に解説していきます。
1. 資格取得時
新規に被保険者の資格を取得した人の1か月の報酬見込額を算出して、標準報酬月額の等級区分にあてはめて決定します。
2. 定時決定
7月1日現在の被保険者について、4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額を標準報酬月額の等級区分にあてはめて、その年の9月から翌年の8月までの標準報酬月額を決定します。
7月1日現在で雇用している以下の方が対象です。
・ 70歳以上の被用者
ただし、以下の方は定時決定を行いません。
・ 6月30日以前に退職した方
・ 7月改定の月額変更届を提出する方
・ 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申出を行った方
3. 随時改定
被保険者の報酬が、固定的賃金の変動にともない大幅に変わったときは、定時決定を待たずに標準報酬月額を改定します。
具体的には、変動月以後継続した3か月の間に支払われた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたときに改定します。
昇給して基本給がアップした場合や、引っ越しをして交通費が変動した場合などが該当します。
定時決定の方法

会社は毎年「算定基礎届」という届けを、総括表とともに日本年金機構へ提出します。
算定基礎届には4月から6月に支払われた報酬額を記載しますが、この3か月の平均を報酬月額とします。
このとき、支払基礎日数が17日以上ない月は算定の対象外です。
欠勤したときに欠勤控除される会社の場合は、
です。
実際に記載するのは4月から6月に支払われた給与額なので、給与が末締め、翌10日払いの会社であれば、4月10日払い分から6月10日払い分までです。
算定基礎届にある報酬月額をもとに、従業員ごとに「等級」(厚生年金では31等級、健康保険・介護保険では50等級)が決まり、等級ごとに「標準報酬月額」が定められています。
なお令和2年度保険料額については、全国健康保険協会のホームページで確認できます。
記載する報酬に含まれるもの
社会保険料は、4月から6月の報酬額の平均によって決まります。
報酬額に含まれるものは、
であり、具体的には以下の報酬が含まれます。
・ 役付手当
・ 勤務地手当
・ 家族手当
・ 通勤手当
・ 住宅手当
・ 残業手当
・ 年4回以上支給される賞与
4月から6月に支払われる報酬を減らす
報酬額に含まれるものの中で、労働者側がコントロールできそうなものは残業手当です。
多くの会社は、3月の残業分を翌月の4月に支払っています。
お勤めになっている会社の、残業代の支払い方法を確認し、4月から6月に支払われる報酬を減らすことで、その年の9月からの社会保険料を抑えられます。
【注意点】保険料額が低いと給付も少ない
保険料が少ないということは、「標準報酬月額」が低くなることを意味します。
出産手当金や傷病手当金は、標準報酬月額をもとに計算します。
標準報酬月額が低くなると、これらの手当金の給付額も少なくなるため注意してください。
保険料の決定方法を知ることが大切
年度初めは、通常の業務に加えてその他の業務も多くなる時期です。
4月から6月に支払われる報酬や仕事の量を、労働者側がコントロールするのは難しいかもしれません。
しかし仕事量を調整できる場合は、あらかじめ業務を平準化しておき対象月の残業を極力減らすといった対策も取れるでしょう。
そのためにも、保険料の決定方法をきちんと知っておくことが大切です。(執筆者:社会保険労務士、2級FP技能士 望月 葵)