今回は、市場の不安心理を表すVIX指数について、その動向と特性について解説していきたいと思います。
目次
VIX指数とは

VIX指数とは、別名「恐怖指数」とも呼ばれており、市場の不安心理がどれだけ上下しているかを数値で可視化した指標です。
通常、VIX指数が低水準だと市場の変動率(ボラティリティ)が少なく、株価は比較的安定に推移します。
しかし、何かしらのリスクイベントが発生した場合、市場のボラティリティが高まり、VIX指数は上昇に転じます。
VIX指数と株価の日中値幅の関連性
前述にあるように、VIX指数は市場の変動率を表す指標であり、この水準が上昇するにつれ株価の日中値幅は拡大する傾向にあります。
今回のコロナショックでは、AIのアルゴリズムによる高速取引が、この指標の急上昇を受けて、瞬間的な相場の急変動である「フラッシュ・クラッシュ」を引き起こしました。
VIX指数が上昇するにつれ日中値幅が徐々に拡大していき、20年3月16日にNYダウは2,997ドルと過去最大の下げ幅を付けました。
このことから、VIX指数が急上昇する局面では、予想外の注文がネットの高速取引経由で連続で発注されるため、一方的な値動きに注意する必要があります。
VIX指数が低水準で安定 → 中・長期投資が有効
VIX指数が低水準で推移しているということは、相場環境が良好でありリスクが少なく、株価が安定している状態を意味します。
そのため、日中の株価の値幅は抑えられ、中・長期的な投資でリターンを狙うことが可能です。
しかし、VIX指数が低水準で推移しているということは、将来的にリスクイベントが発生した際に株価が調整局面入りする可能性があるため、VIX指数が上昇する場合には十分注意する必要があります。
今回のコロナショックが起こる前の株式相場は、米国企業の好決算という裏付けからNYダウは一時2万9,596ドル(VIX指数:13.74ポイント)と過去最高値まで上昇しました。
その後、コロナウイルスの世界的な拡散により、VIX指数は2月21日を転換点に3月16日には82.69ポイントまで急上昇しました。
これにより、NYダウは3月23日に1万8,213ドルまで暴落しました。
このように、VIX指数が上昇を始めた際には注意が必要です。
VIX指数が上昇 → デイトレードが有効

通常、VIX指数が急上昇する局面では、市場の不安心理が大幅に悪化しているため、安易な投資は損失に直結する可能性が非常に高くなります。
しかし、日中値幅が大幅に拡大した局面を1日の値動きととらえるのではなく、数か月の値動きがまとめて1日に集約されているととらえることができれば、大きなチャンスとなりえます。
つまり、日足で株価指数を見るのではなく、5分足や10分足といったより拡張されたチャートでその値動きを把握し、デイトレードをしかけます。
デイトレードの注意点
デイトレードをする際の注意点は、VIX指数が急騰しているということは、相場がネガティブに傾いていることを意味しているので、保有期間が長くなるほど損失につながる可能性が高くなるというところにあります。
そのため、VIX指数が急騰しているときにデイトレードを試みる場合は、ある程度割り切って損益を確定する必要があります。
薄利だからと言って様子見していると、一気に下落に巻き込まれ損失の拡大を引き起こしてしまう可能性がありますので注意しましょう。
ファンダメンタル悪化時の底値予測にVIX指数が有効
今回のコロナウイルスの爆発的な感染拡大により、VIX指数は86.29ポイントまで急上昇し、リーマン・ショック時の80.86ポイントを上回りました。
ここで注目すべきは、VIX指数が下落し始めた段階で株価が反転上昇に転じた点にあります。
今回のコロナショックでは、全てのテクニカル指標が割安の水準まで下落しました。
その結果、チャイナショックやブレクジット時の底値予測として機能していたBPS(一株当たり純資産。株価 ÷ PBRで求める)をも大きく割り込んでしまい、テクニカル指標がまったく機能しない状態となってしまいました。
しかし、このVIX指数が下落したタイミングでNYダウは一転上昇に転じました。
このことから、VIX指数を用いた投資タイミングの予測は、テクニカル分析が機能しない状況下で最大の効果を発揮する可能性があるといえます。
そのため、リーマン・ショックやコロナショックのような異常なリスクイベントが発生してしまった場合は、このVIX指数を投資判断の主軸に置くように心掛けましょう。
VIX指数に注目しながら投資を
以上より、VIX指数は、リーマン・ショックやコロナショックのような、どこまで暴落するかわからない相場の転換点を見極めるのに有効な指標の1つといえます。
また、この指数が急上昇するにつれ、日中値幅は拡大する傾向にあり、デイトレーダーにとっては格好の収益チャンスとなりえます。
しかし、この相場環境下での投資はハイリスク・ハイリターンであるため、損切覚悟で投資判断をすることができない場合は、VIX指数の転換点が到来するまで様子を見ながら投資するようにしましょう。(執筆者:白鳥 翔一)