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麻生内閣時に失敗した現金給付の二の舞に
日本政府は4月16日、所得が大幅に減少した世帯に30万円給付する施策を取り下げ、全国民一律に1人当たり10万円を給付する方針と発表しました。
これは新型コロナウィルスの影響を受け、収入が大幅に減った人や解雇された人の生活を救済するためです。
しかし、政府による緊急事態宣言が発出されたものの、従前同様に給与を得ている労働者は多く存在し、給与カットされているとしても生活に支障をきたしていない国民も多数存在します。
このような人たちは、10万円の給付を受けたところで、日常生活の支出に加えて10万円分多くお金を使うということはおそらくないでしょう。
つまり、貯蓄に回るだけです。
これは、2009年のリーマンショックによる経済の落ち込みを立て直すために麻生内閣で実施された、1人当たり1万2,000円の現金給付(18歳以下と65歳以上は2万円)の緊急経済対策が示している通りです。
加えて、現在はリーマンショック後とは異なり、国民の外出自粛要請がなされており、小売等の企業も営業を最小限にとどめている状況です。
そのような中、現金を受け取ったところでどこで消費するというのでしょうか。
生活困窮者を救済するための現金給付は率先してなされるべきものですが、経済対策にならない、つまり国民の貯蓄に回るだけのおカネをばらまくのは愚行というよりほかありません。
政府による給付は目的と対象を明確にしてこそ効果が発揮される
それでは、今政府がとるべき対策とはどのようなものでしょうか。
それは、一言でいえば困っている人を救済する対策をとるということです。
つまり、新型コロナウィルスのせいで職を失ったり、所得が急激に減った人向けに、生活資金を給付すればよいだけの話です。
休業していても確実に給与を受け取れている人や、一時解雇で雇用保険を受け取れている人にまで生活資金を支給する必要はないのです。
生活に困っている人は、受け取った給付金を日常生活の買い物に利用するはずであり、貯蓄に回すことはないでしょう。
その結果、生活困窮者は救済され、給付金は市場に流れるため経済の下支え効果も期待できるのです。
大胆な給付を行うタイミングは

生活困窮者への生活資金の給付だけでは、経済対策としては規模が小さく効果は限定的といえます。
そのため、新型コロナウィルスからの経済再生のためには、大胆な経済対策が必要なのは間違いありません。
それではその対策を打つのはどのタイミングでしょうか。
外出の自粛要請がされており、企業の営業も必要最小限まで減らされている今でしょうか。
そのような状況でどれだけお金をばらまいても、使うところがないため想定した効果は期待できません。
経済再生のための大胆な経済対策を実施すべきなのは、新型コロナウィルスの影響が収まり、人の移動制限が解除され、経済活動が元に戻ってくるときです。
もちろん、ただ単に国民1人当たりいくらというお金のバラマキであってはいけません。
貯蓄に回るだけだからです。
例えお金をばらまくにしても、全額が利用されるような効果的な施策が必要です。
例えば、旅行に行った場合、あるいは買い物をした場合、自動車や家電を購入した場合等にポイントを付与し、そのうえでそのポイントに利用期限を設けることで、利用期限までにまた新たな消費が期待できるといったようなものです。
このように、適切なタイミング(新型コロナウィルスからの回復期)に効果的な経済対策を打たれることが求められているのであって、人の移動や企業活動が制限されているときに、ただ単に国民1人当たり10万円をばらまくなどといった安直な施策は止めるべきでしょう。(執筆者:土井 良宣)