退職後の健康保険にはいくつかの選択肢があります。
何を基準に選択すべきか、可能な限り後悔の少ない選択をしたいのは誰もが思うことです。
そこで、横断的にメリットデメリットを理解し、後悔を可能な限り少なくしましょう。
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目次
任意継続被保険者
在職中の健康保険組合に継続して2か月以上加入しており、退職日の翌日から20日以内の手続きで、2年間を上限として加入できます。
在職中との違いは、保険料は全額自己負担となります。
在職中については、半分は会社負担です。
健康保険組合によっては病院受診の際の窓口負担が3割未満であることや、メリットがより大きい場合もあります。
また、私学共済の場合は、前述の「継続して2か月以上」の部分が「退職日までに1年と1日以上」となる点は注意が必要です。
また、在職中に出産手当金や傷病手当金の支給要件に該当しており、かつ、1年以上の加入者期間があれば、任意継続被保険者となっても傷病手当金や出産手当金を受給できる場合があります。
任意継続被保険者になった後に要件に該当しても受給はできません。
ここで気になる論点として、「継続して2か月以上は例えばA健康保険組合と私学共済や任意継続被保険者の期間を合算して2年間となる場合は可能か?」との疑問については、任意継続被保険者の期間や私学共済の期間は含めずに要件を満たす必要があります。
また、「通算」して2か月ではなく、「継続」して2か月である点も注意しましょう。
さらに万が一、「資格喪失日から20日以内に届出ができなかった場合は届け出ることはできないか?」との疑問については、以下の通達があります。
正当な理由(昭和24年保文発1400号)
正当な理由とは、天災地変、交通、通信関係のスト等により法定期間内に届出ができなかった場合をいう。
任意継続被保険者制度があることを、資格喪失日から20日を経過した後に知ったという場合は、正当な理由とはならない。
よって、単に「制度を知らなかった」場合や、「忘れていた」場合は難しいと言えます。
国民健康保険
いわゆる国保です。
国民皆保険の観点からもいずれかの保険に入ることとなります。
国保の場合は、任意継続被保険者と異なり、当然、継続して2か月以上のような要件はありません。
窓口はそれぞれ市町村等の窓口にて加入手続きをします。
保険料は市町村ごとに異なり、前年の収入によりますが、離職理由(解雇等)によって、保険料が低額となる場合があります。
しかし、傷病手当手金や、出産手当金を受給できないことが多い点も考慮すべきです。
扶養
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例えば配偶者の扶養に入ることです。
配偶者であれば、例えば配偶者が単身赴任中で別居であっても生計維持要件(年収130万円未満)のみ満たしていれば、同一世帯要件は不問であるために、扶養に入れます。
その場合、配偶者の一方の保険料負担のみで、退職後の妻(または夫)も保険診療や老後の国民年金についても保険料を払ったものとみなして(未納期間とならず)年金を受け取れます。
しかし、配偶者の扶養認定は健康保険組合によっては手続きが煩雑な場合がありますので、早めの手続きが望ましいでしょう。
求められる書類として多いのが身分関係の確認で戸籍または住民票、収入の確認で離職票(退職時点で年収130万円を超えていても離職のため、将来的に年収130万円未満となる証明にもなり得る)、雇用保険の受給確認等です。
家計的にはこの選択肢を採用すると1人の社会保険料負担で一方の配偶者もカバーできるために、出費は少ないと言えます。
しかし、被扶養者である間の年金については、「老齢厚生年金」は増額しない点には注意が必要です。
その場合には、個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)で減少分をカバーする等の対策はあります。
なお、父母や兄弟姉妹の扶養に入る場合も同一世帯要件は不問ですが、年金については配偶者と同様とはいかず、ご自身で国民年金の手続きが必要です(保険料負担も発生・令和2年度は月/1万6,540円)。
参考元:日本年金機構
それぞれには特徴とメリット、デメリットがあり、デメリットを甘受した場合の緩和策もおさえておきたいです。
そして、「人生100年時代」をより賢く生きていきましょう。(執筆者:社会保険労務士 蓑田 真吾)