住宅ローンの全期間固定金利は、長期金利(10年物国債)や超長期金利(30年物国債)の利回りが参考指標となります。
通常、景気が悪くなると株が売られ、安全資産とされる債券(国債)が買われるので、利回りが下がり、全期間固定金利も低下します。
当初はそのような見方が支配的でしたが、新型コロナウイルスによる感染拡大で市場はパニックに陥り、通常とは異なる動きとなりました。
今回は、この流れを概観するとともに、有事に起きうる、不況下での金利上昇リスクについても解説していきたいと思います。
目次
金利上昇は「市場参加者が現金化を急いだ」ため
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新型コロナウイルスによる感染拡大は瞬く間に世界中に広がり、世界の市場が一時パニック状態となりました。
そして、市場参加者は一斉に株を売り現金化を進めましたが、同時に債券や金も売られる異常事態となりました。
ここで大切なのは、この局面においては安全資産とされる債券も売られてしまったため、相対的に利回りが上昇、全期間固定金利も逆に上昇してしまった訳です。
市場が落ち着いた所に「財政悪化懸念」
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では市場が落ち着いた後は、安全資産の債券が買われ、相対的に利回りが低下、全期間固定金利も低下したのでしょうか。
ここで厄介なのが、世界各国が新型コロナウイルスによる経済活動へのダメージを最小限に抑えるため、莫大な財政支出を伴う経済対策を打ち出したことです。
日本においても財政支出39兆円、事業規模108兆円の経済対策が打ち出されましたが、財政支出を賄うのは大半が赤字国債です。
そうすると、今まで市場が織り込んでいた以上に国債が発行されるため、日本の財政がさらに悪化するという懸念が広がり、今までのように積極的に国債を買えなくなります。
特に今後数年は、日本の税収も大幅な悪化が見込まれるため、国債発行額がさらに膨れ上がるという懸念が広がり、全期間固定金利は低下しにくくなっています。
コロナが落ち着くまで「金利は横ばい」推移か
このように見ていくと、通常であれば金利が低下する局面であっても、事態が深刻すぎると逆に金利が上昇するリスクがあることがわかります。
最近の債券市場の動向を見ていると、追加発行される赤字国債についても織り込み始めたようですが、積極的に債券を買って長期金利がマイナスになるにはまだ時間がかかりそうです。
今後の新型コロナウイルスの感染拡大次第ですが、当面は長期金利もゼロ%近辺で推移し、全期間固定金利も横ばい推移する可能性が高いと考えています。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)