新型コロナウイルスの感染拡大防止対策として外出自粛が要請されたり、子どもの休校や親も在宅でリモートワークとなり、家族が一緒に家にいる時間が増えました。
夫婦が一緒にいると息が詰まったり、価値観の違いを強く感じたりするためか、夫婦げんかも増え、離婚する夫婦も出てきました。
離婚するときには、慰謝料の問題が気になることでしょう。
コロナを原因またはきっかけとして離婚する「コロナ離婚」の場合、慰謝料は通常の離婚と比べて上がるのでしょうか、
下がるのでしょうか。
この記事では、コロナ騒動のさなかに離婚を決意した方に向けて、慰謝料の問題と離婚するベストなタイミングを解説します。

目次
コロナ離婚で慰謝料が上がるケース
コロナ離婚で通常の離婚よりも慰謝料が上がるケースとしては、以下のような場合が考えられます。
DVがエスカレートした場合
DVは程度にもよりますが、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚原因になります。
コロナ騒動前からDVがみられた夫婦間で、コロナ騒動後にDVがエスカレートした場合は通常の離婚よりも慰謝料は上がるでしょう。
ただ、コロナ離婚だから慰謝料が上がるわけではなく、DVがエスカレートしたために上がるということにご注意ください。
コロナ騒動中の「巣ごもり生活」において、妻にも夫のDVを招くような言動が遭った場合は必ずしも慰謝料が上がるわけではなく、むしろ下がる可能性もあります。
不倫が発覚した場合
外出自粛が要請され、仕事も在宅勤務となっているのに不倫相手に会うために出かけていると、不倫が配偶者にバレやすくなります。
コロナの感染拡大を防止するために外出自粛や在宅勤務が要請されているのに、それを破って不倫相手との濃厚接触を重ねることは悪質性の高い不貞行為であると考えることもできます。
不貞行為の悪質性が高いと認められる場合は、慰謝料が上がる可能性があります。
コロナ離婚で慰謝料が下がるケース
一方、コロナ離婚で慰謝料が下がるケースもあるので注意が必要です。
妻側にも原因がある場合

巣ごもり生活によって家庭内のストレスが強まっている場合、家族全員が自己責任とは言いがたいストレスを抱えているものです。
このような状況下での夫婦げんかは、夫が一方的に悪いとは言えない場合も多いでしょう。
夫の存在がストレスだからといって妻が暴言をはいたりしていると、むしろ妻の方に責任があることになります。
たとえ夫のDVが発生したとしても、妻側にも原因がある場合は慰謝料は下がる可能性が高いです。
夫の収入が減った場合
離婚の慰謝料額は、夫の収入には関係なく決まります。
たとえ夫が無収入であっても、不倫をした夫には相場として100~300万円程度の慰謝料の支払い義務が発生します。
しかし、現実に慰謝料を支払ってもらえるかどうかを考えれば、夫の収入は重要です。
コロナショックで夫の収入が激減した場合、預貯金などの試算が豊富にあれば別ですが、多額の慰謝料を支払ってもらうことは実際には難しいでしょう。
離婚を急いだ方がいいケースと待った方がいいケース
離婚するタイミングによっても、慰謝料の受取額が変わる場合があります。
また、慰謝料とは別の問題で離婚のタイミングを考えるべき場合もあります。
それでは、コロナ離婚のベストなタイミングとはいつなのでしょうか。
ケース別に見てみましょう。
DVの場合は急ぐべき
配偶者からDVを受けている場合は、慰謝料の問題というよりも心身に変調をきたす前にその状態から脱するべきです。
お住まいの自治体の配偶者暴力相談支援センターや婦人相談所、男女共同参画センターなどに早めに相談しましょう。
コロナ騒動前から離婚を意識していた場合は急いだ方がいい
コロナ騒動前から離婚を意識していて、コロナ騒動がきっかけとなって離婚を決意した場合は、コロナが収束した後も離婚の決意が揺らぐ可能性は低いでしょう。
離婚の決意が固い場合は、離婚を急いだ方がいいでしょう。
なぜなら、これから「コロナ不況」が深刻度を増していくおそれが強いため、少しでも夫にお金があるうちに離婚した方が多くの慰謝料をもらえる可能性が高いからです。
もっとも、コロナ収束後に収入が増える見込みがある場合は、それまで離婚を見合わせるのもいいでしょう。

コロナ騒動後に初めて離婚を意識した場合は待った方がいい
コロナ騒動前は具体的に離婚を意識したことがなかったのに、コロナ騒動による巣ごもり生活を続けるうちに離婚を意識した場合は、コロナが収束するまで離婚は見合わせた方がよいでしょう。
コロナ騒動は、文字どおり非常事態です。
夫も好きで在宅勤務や外出自粛をしているわけではありません。
平常時の生活が戻れば、また円満な家庭生活が戻る可能性は十分にあります。
今後の長い人生で後悔しないためには、非常事態での感情ですぐに離婚を決めない方が得策です。
コロナをきっかけに関係を見直そう
「コロナ離婚」という言葉があちこちでささやかれていますが、実際に離婚にまで至るケースはコロナ騒動以外に離婚の原因があるケースがほとんどであると思われます。
したがって、離婚の決意が固い場合は慰謝料の問題を戦略的に考えつつ離婚するのもいいですが、そうでない場合はコロナが収束するまでは相手の立場も理解しつつ、家族関係を見直してみた方がいいでしょう。(執筆者:川端 克成)