コロナウイルスの影響による解雇も増え、会社を辞めなくてはならなくなる時が来るかもしれません。
退職から間を置かずに新しい勤務先が見つかれば、それに越したことはありませんが、望まない退職を強いられ、いきなり無職になってしまう事態も考えられます。
あるいは、それを機に、自営業をはじめる人もいるかもしれません。
会社を辞めたあと、健康保険はいったいどうすればいいのでしょう。
目次
健康保険の選択肢は3つ
すぐに転職先が決まったなら、転職先であらためて健康保険に加入できます。
無職、あるいは自営業、フリーランスになった場合は、自分で健康保険について考えなくてはいけません。
この場合、健康保険には、以下の3つの選択肢があります。
「健康保険料をいくら払わなくてはいけないか」ということは、健康保険を選ぶうえで重要な点です。
3つの選択肢について、健康保険料も簡単に比べてみましょう。
1. 家族の被扶養者になる
家族が勤務先で健康保険に加入していれば、その被扶養者になれますが、被扶養者になるには「年収が130万円未満であること」など、一定の条件が定められています。
それぞれの健康保険によって定めがありますので、かならず確認してください。
健康保険料
被扶養者になれば、健康保険料を別途支払う必要はありません。
被扶養者が増えても、家族が給与から納めている健康保険料が増えるわけではありません。
ですから、健康保険料を節約できます。
ただ、男性のなかには「男として、妻の扶養に入るのは…」とためらう人もいるようです。
被扶養者でいるのが嫌なら、それを、収入を増やして扶養の対象から外れるためのモチベーションとするのも、ひとつの手かもしれません。
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2. 任意継続被保険者になる
退職した後も、それまで会社で加入していた健康保険に継続して加入できます。
任意継続するには「退職前に、継続して2か月以上の被保険者期間があること」など、一定の条件が定められています。
また、任意継続で加入していられる期間もかぎられています。
それぞれの健康保険によって定めがありますので、かならず確認しましょう。
任意継続を選んでも、それまで使っていた健康保険証は返さなくてはいけません。
任意継続の手続き完了後、新しい健康保険証が発行されます。
健康保険料
基本的には、会社員のころ給与から納めていた健康保険料の2倍の金額を支払わなくてはいけません。
これは、会社が半分負担してくれていた健康保険料を、すべて自分で支払わなくていけなくなるからです。
ただし、任意継続で負担する健康保険料には、上限額が設けられていますので、会社員時代の健康保険料しだいでは、2倍の金額よりも少なくて済むかもしれません。
3. 国民健康保険に加入する
上記2つを選ばない、または選べないとなれば、残されている選択肢は、国民健康保険だけです。
無職の人やフリーランスで働く人は、国民健康保険の第1号被保険者になります。
健康保険料
国民健康保険は、各市町村が取り扱っています。
そのため、国民健康保険料の算出の方法も、市町村ごとに異なります。
ホームページがある市町村なら、国民健康保険料の算出の方法も載っているでしょう。
もちろん、役所の窓口や電話で問い合わせられます。
国民健康保険には、扶養という制度はありません。
ですから、もし会社員のころ、家族を健康保険の扶養に入れていたなら、その扶養家族の分の国民健康保険料も支払わなくてはいけなくなります。
これは、決して小さくはない負担でしょう。
任意継続と国民健康保険、どちらの方が健康保険料が安くなるかは、人それぞれです。
退職が決まったら、できるだけ早く調べるようにするのがおすすめです。
健康保険に未加入は危険
心身の健康にいくら自信があっても、病気や事故はいつ我が身に降りかかってくるかわかりません。
目先の手間や健康保険料を惜しんで、健康保険を未加入の状態にしておくのは危険です。
扶養家族がいる人であれば、家族が病気やケガに見舞われた場合にも備えておかなくてはなりません。
自分のためにも家族のためにも、会社を辞めたあとも、きちんと健康保険に加入しておきましょう。(執筆:社会保険労務士 嵯峨 朝子)