健康保険を使う場合、医療機関の窓口に保険証を提示し、一部自己負担金を支払うことで診療などを受けられます。
しかし、何らかの事情があってそれができないときには、「療養費支給」という形で全額自己負担とはならないような仕組みになっています。
この「療養費支給」は細かなルールがあり、場合によっては全額自己負担となってしまうケースがあります。
適正な自己負担で医療機関を受診するために、見落としやすい注意点を確認していきましょう。
目次
療養費支給とは
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健康保険には、いったん医療費の全額を自分で立替払いしたときに、後日申請することで、健康保険が認めた場合に限り、原則として自己負担3割を超えた部分の払い戻しを受けられる制度があります。
これを「療養費支給」申請といい、具体的には、次のような場合に申請ができます。
(2) 海外で病気やケガをして医療機関にかかった場合
(3) はり、きゅう、あん摩マッサージ師にかかる場合
(4) コルセットなど治療用装具を必要とする場合
今回は、遭遇するケースが多く注意が必要な(3)と(4)についてみていきたいと思います。
はり、きゅう、あん摩マッサージ師にかかる場合
はり、きゅう、あん摩マッサージ師にかかるときは、いずれも「医師が必要と認めた場合」のみ支給対象です。
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健康保険を使用するには、「医師が必要と認めた場合」であることを証明しなければなりません。
そのため申請時には、医師が発行した文書による「同意書」を添付します。
なお、継続して施術を受けるためには、原則として6か月ごとに医師の同意書が必要です。
療養費の受領委任制度について
健康保険を使用する場合、被保険者が施術料全額を支払った後に療養費として申請し、償還払いをしてもらうのが原則です。
しかし平成31年1月より、「受領委任制度」の取扱いが可能となりました。
「受領委任制度」とは、あらかじめ登録を受けたはり、きゅう、あん摩マッサージの施術所にかかることで、被保険者は通常の医療機関にかかるのと同様に、原則自己負担3割で施術を受けられる制度です。
こちらの制度は、全国的に統一した取扱いになったのがごく最近ということもあり、現時点では登録していない施術所や、対応できていない健康保険組合などがあります。
受領委任制度が使えるかどうか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
コルセットなど治療用装具を必要とする場合
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治療のための装具を購入・装着した場合は、「治療用装具療養費」の支給対象です。
健康保険を使用するには、「治療のために必要であることから医師の意見・指示に基づいて購入したもの」でなければなりません。
そのため申請時には、医師が記入・証明した「意見および装具装着証明書」の添付が必要です。
治療用装具購入の注意点
治療用装具に健康保険を使用できるのは、あくまで治療のために必要な場合であって、日常生活や美容上の目的で使用されるものは対象となりません。
このほか、治療のためであっても療養支給の対象とならない場合が以下のように細かく決められていますので、注意が必要です。
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療養費支給のルールを知っておこう
「療養費支給」は細かなルールがあるものの、事前に知っておけば十分に対応できるものばかりです。
過度な負担にならないためにも、知識を活用しましょう。(執筆者:今坂 啓)