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リートの仕組みと魅力的な利回り
リート(不動産投資信託)は、投資家から集めた資金を不動産に投資し、そこからあがってくる賃貸料を投資家に分配する金融商品のことをいいます。
日本のリート(J-REIT)は、リートを運営している投資法人が、利益の90%超を投資家に分配することで法人税が制度上非課税扱いになります。
そのため、リートは投資家にとってメリットがある運用手法といえるでしょう。
現在は、世界的に中央銀行が低金利、量的緩和策を採っており、ほとんどの投資対象から利回りが消えてしまっています。
一方で、生命保険会社や損害保険会社、年金などといった投資家は、その性格上ハイリスク運用は困難であり、確実な利回りを求めています。
また、銀行も貸出しが思ったほど伸びないため、預金者から預かった資金の運用先として利回りのある投資対象を欲しています。
そのような中、日本のリートの平均利回りは4%台半ばを維持しており、上記のような投資家から多くの資金を集めています。

コロナショックにより利回りがほぼ消失するリートが出現
日本のリートの運用会社であるインヴィンシブル投資法人は5月11日、当該リートの2020年6月期の予想分配金を1投資口当たり30円と発表しました。
前年同期の分配金は1投資口当たり1,656円であったため、98%以上の減少(分配金利回りは0.3%弱に低下)という異常な状況になってしまいました。
その原因としては、当該リートは、投資対象不動産がホテル中心のリートで、新型コロナウィルスにより旅行需要が減少したことに加え、インバウンド(外国人旅行客)もほぼゼロになったことにより、収益が上がらなくなったことが挙げられます。
従前通りの賃貸料を投資対象ホテルから徴収し続ければ、稼動率が下がったホテル運営会社は倒産することとなるため、賃貸料を減免した結果です。
リートに対する今後の投資方針
リートと一言で言っても、投資対象不動産によって複数種類が存在します。
新型コロナウィルスにより自粛が要請される状況下では、ネット通販等の需要が盛り上がったことにより、物流倉庫を投資対象とするリートは非常に好調を保っています。
一方、上述したようなホテル中心のリートや休業を余儀なくされている商業施設中心のリートは、価格も急落しています。
そこで今後の投資方針ですが、長期ないし超長期での運用を前提とされている方にとっては、この急落した局面は投資チャンスです。
今後も予想分配金が引き下げられるリートは出てくると思いますが、この状況が半永久的に続く訳ではありません。
新型コロナウィルスが終息すれば、旅行や買い物需要、訪日外国人は戻ってきます。
また、自粛疲れやペントアップディマンド(繰越需要)から一時的に旅行、買い物需要が大きく盛り上がる可能性も十分想定されます。
従って、今は急がず、慌てず、分配金が大きく引き下げられ価格が下落したリートを丹念に拾っていきましょう。
将来的にはインカムゲイン(分配金)だけでなくキャピタルゲイン(値上がりによる売却益)も狙えます。(執筆者:土井 良宣)