平成27年に相続税法が改正され、基礎控除が少なくなり、相続税を申告しなければならない対象者が増えました。
例えば相続人が2人であれば、基礎控除額は4,200万円です。
持ち家を所有していれば、その不動産評価額もふくめて計算しますので、特に地価の高い都市部に住んでいる方々であれば、対象となることも多いでしょう。
相続税を申告したあとにやってくるのが税務調査です。
今回はこの税務調査の流れと対策について、元国税調査官として税務署に勤務していた経験にもとづき解説していきます。

目次
相続税の税務調査の流れ
相続税の税務調査は、朝から夕方にかけて行われることが多いです。
事前に電話で日程調整の連絡があり、当日は2名の調査官がやってくる可能性が高いでしょう。
おおまかに午前に聞き取り調査、午後に現物調査が行われます。
まず午前の「聞き取り調査」では、以下のようなことが聞かれます。
・亡くなった方の職歴と学歴
・生前の生活費と財産の管理のしかた
・取引銀行や取引証券会社
・死亡原因や入院の状況、そのさいの財産管理者
・生前の相続人に対する贈与
次に午後の「現物調査」について説明します。
現物調査は、午前中に行った聞き取り調査をもととして、預金通帳、印鑑、保険証券などの確認をします。
財産の保管場所の確認として、家の中を見て回り、引き出しの中を確認することもあります。
相続税の税務調査対策。有効なのは「生前贈与」
相続税の節税対策として、最も有効なのは生前贈与です。
贈与税は財産をもらった人に対してかかる税金ですが、
法定相続人であるかどうかは関係ありませんので、妻、子供だけでなく孫にも贈与できます。
例えば贈与したい親族が7人いれば、

注意点
この生前贈与にはいくつか注意点があります。
前述の聞き取り調査では、
このとき、実際に贈与を行っている場合は、贈与があったことを伝えた方が良いです。
贈与がなかったと回答した場合、「名義預金」として相続財産に認定されてしまう可能性があるのです。
「贈与の成立条件」を満たしているか確認を
贈与というためには、
また財産を
もらった人がもらった物を実際に管理しており、
自由に処分できる状態であることが重要です。
物の所有権が移転していない場合は、相続財産と認定されてしまうことがあるので、注意しましょう。
具体的には孫名義の預金をつくり、印鑑などを自分で管理しているという状況では、贈与とはいえないでしょう。

亡くなる前3年以内にもらった財産は、贈与ではなく相続
亡くなった日からさかのぼって3年以内にもらった財産については、3年内贈与加算として相続財産に加算されてしまうので、注意しましょう。
これは相続などで財産をもらった人に対してのみ適用される制度です。
相続などで財産をもらっていない孫などは対象外です。
税務調査を怖がらず、落ち着いて対応しよう
税務調査と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、一般的な税務調査は査察部ではなく税務署が行います。
穏やかな税務職員も多いので、極度に怖がることはないでしょう。
この記事が、少しでも税務調査の不安を払拭するものとなっていれば幸いです。(執筆者:神谷 司)