これは、ある一家のお話です。

祖父である山岸さんは74歳、娘44歳、孫23歳になりました。

娘も孫も大人になり、山岸さんは財産を残すことを考えはじめます。

相続税対策として内緒で始めた暦年贈与

考える男性

ある日のこと、山岸さんは終活セミナーに行き、相続税対策になる「生前贈与」の説明を受けました。

相続税の計算は基本的に、被相続人が亡くなった時に所有していた財産全てを対象として算出します。

もし、山岸さんが生きているうちに娘や孫へ贈与をして、財産の額をあらかじめ減らしておけば、いざ山岸さんが亡くなったときに相続税を少なくできます

具体的には、

1年に110万円までの贈与なら非課税になる「暦年贈与」という方法

があることを知った山岸さんは、早速、娘と孫の名義で銀行口座を作り、1年に110万円ずつ、贈与のつもりで自分の財産をそれぞれの口座に移し始めました。

そして、かなりの年月が経過した後、銀行口座の存在を娘も孫も知らないまま、山岸さんはついに他界します。

預金は相続税の対象に 届かなかった山岸さんの思い

山岸さんが他界したあと、遺品整理をしていると、多額の現金が入金された娘と孫名義の銀行口座が見つかります。

この口座の預金は名義人である娘と孫の財産として扱われるような感じもしますが、残念ながら相続財産とみなされ相続税の対象となり、生前贈与をしていたつもりの山岸さんの思いは届かない可能性が高いです。

こういった預金は「名義預金」と呼ばれ、相続時にしばしば問題となり、最近増えているケースでもあります。

「名義預金」とみなされる4つのポイント

通帳と印鑑

以下に該当すると「名義預金」とみなされる可能性がありますので、子どもや孫に銀行口座を使って贈与したいと思う場合は気を付けましょう。

1. 銀行口座があることを名義人(今回の場合は娘や孫)が知らない

2. 通帳・印鑑の所在が名義人のところではない

3. 届印が名義人のものではなく、名義預金の口座を作るためだけに使用されている

4. 入金履歴ばかりで、名義人が日常使っている形跡がない

名義人が口座のお金を自由に使える状態であったかどうか

が、名義預金とみなされるか否かの大きな争点となります。

また、相続する可能性がある側も自分の名義預金が存在していないかどうか、被相続人が生前の間に念のため確認しておいた方が無難です。

贈与は記録に残しておくことが大切

贈与の思いがきちんと生かすためには、「贈与契約書」として書面で残しておくと確実です。

法律で文章の形式が決まっているものではありませんが、誰から誰に、いつ、何を、どのように、といったことを記入し、贈る側も受け取る側も署名、実印での捺印をし、印鑑証明書を添付します。

なお、受け取る側が未成年の場合は、両親の署名と捺印も必要です。

また、贈与の際は現金を手渡しするのではなく、銀行振り込みにして、実際に贈与があったという送金の記録を残すことをお勧めします。

大切な子どもや孫のために…終活の情報確認は入念に

終活セミナーが盛んに行われ、書店に行けば、相続や贈与についての書籍がたくさん並んでいる昨今。

親が子どもや孫のために、少しでも何か残してあげようと生前対策をする話はよく耳にします。

しかし、よかれと思ってしたことが、逆に残された者の負担につながってしまったというケースも珍しくありません。

情報確認をしっかりした上での対策を心掛けましょう。(執筆者:AFP、2級FP技能士 大川 真理子)