不動産投資を勉強した人であれば、消費税還付という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
一般的に消費税還付は、仕入控除税額が売上にかかる消費税額を上回りマイナスとなった場合に受けられます。
不動産投資でも、条件を満たせば同様に消費税還付を受けることが可能です。
不動産投資の場合には購入する物件の単価が高いので消費税の額も大きく、還付額も相当な金額になります。
しかし、その消費税還付が令和2年の税制改正で使えなくなるのです。

目次
不動産における消費税還付の仕組み
事業者が支払う消費税は、受け取った消費税(売上にかかる消費税)から支払った消費税(仕入れにかかる消費税)を引いて計算されます。
事業者が支払う消費税がマイナスになれば、その分の消費税が還付されます。
これを消費税還付と言います。
不動産投資では家賃収入は非課税のため仕入れにかかる消費税を計上できないので、本来は消費税還付は受けられません。
例外として、全体の売上の中に占める課税売上の比率を高めれば、購入時の消費税を差し引くことができ消費税の還付を受けられるのです。
課税売上の比率を高めるために、以前は自動販売機の売上、最近では金地金の売買に伴う手数料や損金不動産投資で消費税還付を受ける条件
実際に、不動産投資で消費税還付を受けるためには、さまざまな条件を満たさなくてはなりません。
まず、法人が必要です。
既存の法人を使うか、新しく法人を設立する必要があります。
次に、使用する法人を課税業者として届け出ます。
課税業者でないと消費税還付を受けられないからです。
そして、法人名義で物件を購入し、次の4つの条件を満たせば消費税還付を受けられるのです。
2. 事業所年度の家賃を計上しない
3. 家賃収入以外で課税売上が発生する事業を行う
4. 消費税の申告は、課税方式を申請して一括比例分配方式の税抜き経理を行う
【令和2年度】消費税還付の改正内容

不動産投資の消費税還付は、物件の購入価格も数千万円~数億円ですので、消費税還付の額も非常に大きくなります。
ここ数年の不動産投資ブームにおいて、資産管理法人を使ったこの消費税還付は「消費税還付スキーム」として広く使われました。
しかし、消費税還付スキームについては、以前から国税庁による指摘があり、令和2年度(2020年度)の税制改正大綱で消費税還付が一切認められなくなりました。
法改正の内容を簡単に要約すると、1,000万円以上の賃貸住宅を購入すると、仕入れにかかる消費税を計上できなくなるということです。
税制改正は令和2年10月1日からなので、それまでは現状の消費税スキームは活用できます。
節税よりも賃貸経営を重視すべき
不動産投資は税金との戦いとも言われており、節税することは非常に重要です。
今回の税制改正では、消費税還付の他にも、海外不動産を使った減価償却スキームも使えなくなりました。
今後は節税で利益を確保するよりも、賃貸経営自体で利益を上げることを重視しなければならないということです。
特に、資産管理法人で資産を増やしていくには、毎年黒字を計上し、融資を受けやすい財務状況を作る必要があります。
節税を目的として資産を購入するというのは本末転倒です。
賃貸経営を継続させるためには、良い物件を購入し、コツコツと資産を増やしていくことが重要だと言えます。(執筆者:宅地建物取引士・公認不動産コンサルティングマスター 山口 智也)