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相続税申告書の作成に自らチャレンジしてみた
30年近く前ですが、筆者も自身の親の相続が発生した時に、自分で相続税の申告書を作成しようと思っていました。
当時は金融機関に勤め、親の所得税申告は、筆者が行っていたので、相続税申告も何とかなるだろうと気楽に考えていました。

遺産のほとんどが調整区域の不動産でした。
不動産の相続税評価は固定資産評価に国税庁の発表する倍率を掛ければ評価できそうです。
多少の上場株もありましたが、
上場株の評価は
(2) 死亡時の月の月中平均額
(3) 死亡時の前月の月平均額
(4) 死亡時の前々月の月中平均額
評価額=(1)~(4)のうち1番低い額です。
上記の月中平均額は、取引の証券会社にて教えてもらいました。
問題は、教科書に記載のない調整区域の雑種地の評価
宅地や農地は、国税庁にて公表されている路線価や倍率にて計算ができます。
ところが雑種地の評価については、当時(平成5年)は、「近傍が宅地(農地)であれば宅地(農地)に比準して評価しなさい」と書いてあるだけでした。
筆者はここでまずつまずきましたが、税理士に依頼したら、正確な評価額を出してくれるかというと、そうとは限りません。
経験が多い税理士であれば、宅地の雑種地に対する斟酌(しんしゃく)割合がいくらなのか知っています。
また地元の不動産業者等から売買実例を聞き出し、そこから評価したりします。
相続税の教科書の知識だけでは申告書は作れない
実務上、見落としがちなものに、保険の契約、および被保険者も家族になっているのに、故人の通帳から引き落とされている保険契約のものがあります。
掛け捨て保険なら評価が不要ですが、その保険を解約した場合、返戻金のあるものは相続税上の財産になります。
死亡直前に大金を引き出し現金にて所有していた場合とか、家族に預金を移動して預けていても、相続財産として計上しなければなりません。
実際、税務署に出された申告書の重要チエック項目はそこです。
大金が、死亡前に引き出され、愛人にそのお金をあげていた場合

筆者が実際体験しましたが、当然当局は念入りに、そのお金の行き先を家族の通帳も含め調査しました。
もちろん相続人の方、全員にも直接そのお金の行き先について確認作業を行いました。
全員、証拠はありませんが、「愛人に渡したのでは」と答えます。
実際、みなさん、故人のお金の行方をご存じなかったようです。
税務調査の結果、「是認」となり、追徴課税はありませんでした。
相続人が本当に知らない場合は、正直に知らないと答えればいいです。
しかし、相続人が遺産を隠して「愛人に渡したことにした」場合は、当然ですが犯罪となりますのでご注意ください。
一般の方が「税務調査に入られない申告書」を作成するのは無理です
相続税申告は、他の税目と比較して調査に入られやすいです。
相続税調査の経験ノウハウも必要です。
申告期限までの手順も大切です。
そのため自身で申告を作るよりは、やはり相続の実務経験の多い税理士を探したほうがよいでしょう。
よい税理士を探すためには1度、有料でお試し相談をしてみることです。
初回面談無料が、お客様目線でよいとは限りません。
経験のなさを料金に反映しても、申告後、税務調査に入られ多額の追加徴収となれば意味がありません。
また、節税のみのアドバイスをされる方も注意です。
相続には遺産分割を円満に進めることも大切です。
相続人全員の方と随時、報告しながら進めてくれそうか、お試し相談時に、お互いの相性も含め、相続人全員の利益を考えて動いてくれる方がどうか、じっくり検討してください。(執筆者:一級FP技能士、CFP、宅地建物取引士、相続診断士 橋本 玄也)