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生命保険料の「基礎率」
生命保険の保険料は原則的に、次のような3つの「基礎率」を元にして、決定されています。
(1) 予定死亡率
性別や年齢ごとに想定される、1年間あたりの「死亡率」になります。
(2) 予定利率
契約者から集めた保険料の運用で得られる運用益を予測し、その予測を元にして、契約者に対して約束した「運用利回り」になります。
(3) 予定事業費率
生命保険会社が事業を運営していくために必要となる、「経費の目安」になります。
以上のようになりますが、(2) の予定利率については、数値が引き上げられると、保険料が値下げされ、逆に数値が引き下げられると、保険料が値上げされる場合が多いです。
この理由として運用がうまくいく見込みなら、その運用益の分だけ、保険料を値下げできるからです。
一方で運用がうまくいかない見込みなら、減ってしまう運用益の分だけ、保険料を値上げする必要があります。
予定利率が現在よりはるかに高い「お宝保険」は解約しない方が良い
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生命保険会社が(2) の予定利率を決める際には、「標準利率」(国債の利回りを元にして金融庁が決定)を指標にしているため、両者は大きな乖離が生じないようになっています。
この標準利率は2017年4月から、過去最低の0.25%になっていますが、バブル期(一般的には1986年12月~1991年2月)には、5%くらいありました。
またバブル崩壊後も1996年3月までは、3.75%くらいはあったため、予定利率もこのくらいの水準でした。
こういった予定利率が高かった時の生命保険は、「お宝保険」と呼ばれております。
生命保険の本などを読むと、「お宝保険を解約してはいけない」などというアドバイスが、よく掲載されております。
この理由として契約時に決定した予定利率は、通常であれば保険期間中に変動しないため、お宝保険を解約しなければ、3.75%~5%という高水準の予定利率が、これからも適用されるからです。
厚生年金基金の「中途脱退者」は、請求先が企業年金連合会に変わる
企業が福利厚生のひとつとして、公的年金の上乗せを支給する「企業年金」を、実施している場合があります。
一般的に企業年金と呼ばれているものには、次のような3種類があり、勤務先がどれを実施しているのかは、就業規則などを見るとわかります。
・ 確定給付企業年金(規約型、基金型)
・ 企業型の確定拠出年金
例えば厚生年金基金の加入期間が短かった「中途脱退者」の場合、年金の支給のために積み立てられた資産の全部または一部が、厚生年金基金から企業年金連合会に移されます。
そのため企業年金連合会に移された資産分の年金については、こちらに請求する必要があります。
しかし厚生労働省のウェブサイトの中にある、「厚生年金基金等の未請求者の状況について」を見てみると、企業年金連合会に対して請求をしていない方は、2012年度末時点で133万人もいるとわかります。
参照:厚生労働省
これだけの方が未請求になっていることに、かなりの驚きを感じますが、企業年金の主流になりつつある、企業型の確定拠出年金においても、同じようなことが起きています。
放置された企業型の確定拠出年金は、手数料で資産が目減りしていく
企業型の確定拠出年金を実施している企業を退職した場合、勤務先などが拠出した掛金と、その運用益で構成される「個人別管理資産」を、移管する必要があります。
例えば新しい勤務先が、同様の制度を実施している時は、そちらに個人別管理資産を移管します。
また例えば専業主婦になった時は、脱退一時金を請求できる場合を除き、個人型の確定拠出年金(iDeCo)の口座を開設し、そちらに個人別管理資産を移管します。
もし退職から6か月以内に、このような手続きをしなかった場合には、個人別管理資産は強制的に現金化されたうえで、国民年金基金連合会へ自動的に移換されます。
そして持ち主が自主的に移管したり、企業型の確定拠出年金に加入したりするまで、そこに放置され続けています。
また放置されている期間は、手数料を取られ続けるため、その分だけ資産が目減りしていきます。
国民年金基金連合会へ自動的に移換された方は、「平成30年 国民年金基金連合会報告書」によると、2019年3月31日時点で約78万4,000人もおり、放置された資産は約1,995億円に達するそうです。
参照:国民年金基金(pdf)
心当たりがある方は、この放置された企業型の確定拠出年金や、上記の未請求になっている厚生年金基金などを、探し出して欲しいと思います。
また過去を振り返ったり、資料を調べたりしながら、これらを探し出していく作業は、宝探しに似ているような気がします。
こういった意味で本人の手元に渡っていない、宙に浮いた企業年金は、昔に加入した生命保険より、お宝保険ではないかと思います。
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企業型の確定拠出年金の資産配分を変えて、お宝保険を自分で作る
企業型の確定拠出年金は他の企業年金と違って、企業などが拠出した掛金を何で運用するのかを、自分で柔軟に決定できます。
ただ資産運用の経験が少ない方は、定期預金などの元本確保型商品ばかりを選んでしまうため、運用利回りが低くなってしまいます。
そこで掛金の一部を、株式が組み入れられた投資信託などに、振り向けてみます。
株式投資の平均利回りは5%程度と言われているため、株式が組み入れられた投資信託の割合によっては、企業型の確定拠出年金の運用利回りが、お宝保険の目安とされている3.75%を、上回る可能性があります。
そのため予定利率が高い時に生命保険に加入できなかった、若い世代にとってのお宝保険は、企業型の確定拠出年金ではないかと思います。
なお株式が組み入れられた投資信託の割合を、どれくらいにするのかについては、「100-自分の年齢」を目安にするのが良いと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)