世界各地で新型コロナウイルスによる経済的なダメージが広がり、個人の住宅ローン返済にも大きな影響を与えています。
住宅ローン返済が苦しくなった方は、銀行に相談して条件に当てはまれば、返済期間の延長をはじめとする毎月の返済額を軽減する措置を受けられます。
一方で、現在は何とか住宅ローンを返済できている家庭では少しでも負担を減らそうと、住宅ローンの借り換え申し込みが殺到しています。
変動金利が急低下した数年前にも住宅ローンの借り換え申し込みが殺到したことがありましたが、今回は生活防衛のためということで意味合いが少し異なるようです。
この記事では、最新の住宅ローンの借り換え事情をお伝えするとともに、注意してほしい点についても解説していきます。
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目次
住宅ローンを借り換えるメリット
家計に占める住宅ローン返済の割合は都市部の家庭ほど大きく、住宅ローン返済額を少しでも減らすことができれば生活にもゆとりが生まれます。
また、ネット銀行を中心に数年前より変動金利型の金利がさらに低下しており、返済額だけを試算すると、恐らくはほとんどの家庭で返済額は軽減されると思います。
さらに銀行によっては、最長35年以内で完済時年齢80歳未満であれば、繰上返済などで短くなった返済期間を延長できる場合もあります。
最近の住宅ローンはネット銀行を中心に、当初から8大疾病保障などを無料で付保できるのもお得感を高めています。
具体的なシミュレーション
実際にローンの借り換えをした場合にはどのような結果が出るのかを具体的にシミュレーションしてみましょう。
毎月返済額:8万4,685円
総返済額:3,556万7,804円 (1)
<2,200万円を変動金利0.4%、残りの返済期間25年で借り換えた場合>
毎月返済額:7万7,073円
総返済額:2,312万1,837円 (2)
<2,200万円を変動金利0.4%、返済期間35年で借り換えた場合>
毎月返済額:5万6,141円
総返済額:2357万9,389円 (3)
返済期間も伸ばす場合では、{(1) – (3)} = 毎月返済額は2万8,544円減少
しました。
住宅ローンを借り換えることのデメリット
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このように確かに毎月返済額を軽減する効果はありますが、最大のデメリットは
借り換え手数料を現金で支払う必要があることです。
銀行が借り換えに積極的なのはこの借り換え手数料が入ってくるからなのですが、現在はおおむね借り換え額の2.2%(税込)を支払う必要があります。
上記の例で言えば、借り換え額2,200万円に2.2%をかけて、48万4,000円かかるのです。
また、登記識別情報を書き換えるための司法書士報酬も50万円程度かかることもあり、借り換えで100万円程度の出費は覚悟しておく必要があります。
総返済額で見て100万円以上の削減効果があったとしても、この時期に大切な流動資産を使うのには十分な検討が必要です。
さらに借り換えは前の銀行が一度審査しているということもあり、個人信用情報などで事故がなければ基本的に審査は通るものでした。
しかし、最近は銀行のシステムに登録されている会社の評点がコロナ渦の影響で低下し、審査に通らないという事態も起こっているようです。
銀行が今まで以上に審査に慎重になるのはやむを得ず、借り換えのハードルは以前より上昇しています。
住宅ローン借り換えは慎重に
ここまで、住宅ローン借り換えのメリットとデメリットを解説してきました。
借り換えで毎月返済額の減少というメリットを受けられるのは事実ですが、手数料支払いなどで大切な流動資産が減少するというデメリットもあるのです。
今後のコロナ禍の影響を見極めながら、じっくりと検討されることをおすすめします。(執筆者:1級FP技能士、宅地建物取引士 沼田 順)