米国の次の大統領を決める選挙が、2020年の11月に実施されます。
最大の注目点は「トランプ大統領が再選するか否か」ということです。
そこで今回の記事では、米国の大統領選挙を巡る最新の状況を紹介します。
金融市場の大きな変動要因になり得るため、投資をされている方はもちろん、これから投資を始めようという方も注目すべきイベントです。

目次
支持率は低下中
現在、トランプ大統領の支持率は低下中で、世論調査では民主党の候補になることが確実視されているバイデン前副大統領に差をつけられている状況です。
6月時点の世論調査では支持率が不支持率を上回り、トランプ大統領が再選を果たすにあたって非常に厳しい状況が続いています。
この支持率は、当時再選を目指していたカーター大統領やブッシュ大統領の同時期と同程度の水準で、両氏ともに再選を果たせませんでした。
では、なぜトランプ大統領の支持率が低下してしまったのでしょうか。
この理由について説明していきます。
低下の理由
トランプ大統領の支持率が低下してしまった理由は以下の2つです。
1. 新型コロナウイルスの対応
まず1つ目が、トランプ大統領の新型コロナウイルスへの対応が国民の反感を招いたことです。
現在、米国の感染者数・死者数ともに世界で最も多くなっており、トランプ大統領の政策が誤っていたのではないかという不信感を招くことになりました。
2020年第1四半期のGDP成長率は前期比年率 -5.0%とマイナス成長に転じ、失業率は5月時点で13.3%と非常に高水準で推移しています。
なお、失業率に関しては統計上の誤りがある可能性が指摘されており、実態はさらに悪いのではないかという声も一部にはあります。
経済指標に目に見えて悪い結果が出てくることで、トランプ大統領に対する支持が低下していき、支持率が過半数を切る事態になった1つの理由となりました。
2. 黒人デモを巡る対応
トランプ大統領の支持率低下に追い打ちをかけたのが、ミネアポリス警察による黒人暴行事件です。
人種差別的な言動を繰り返すトランプ政権のもと人種間対立が深まっていた状況で、被黒人警察が黒人のジョージ・フロイド氏を窒息死させてしまったことをきっかけに抗議デモが全米に広がりました。
トランプ大統領が抗議デモに対して米連邦軍を出動させて鎮圧する姿勢を示したことで、国民の反感は増大し、支持率が低下する事態となりました。
前国防長官であるジェームス・N・マティス退役海兵大将や、エスパー国防長官もトランプ氏の「国民を分断」させるような言動に対して否定的な意見を表明しており、国民の反感が鎮まることは当分の間見込めないことが考えられます。
大統領選挙はどうなるのか

・ 新型コロナウイルスの感染拡大への対策
・ 黒人抗議デモへの対応
が国民の反感を買うことになり、トランプ大統領の支持率が一段と低下していますが、肝心の大統領選挙はどうなるのでしょうか。
米国では大統領選挙の勝敗を巡って「賭け」が行われており、そのオッズ倍率を見ることによって、実際に投票を行う米国民が「大統領選挙がどのような結果になると予想しているか」を確認できます。
オッズ倍率は、3月時点では民主党候補のバイデン前副大統領と拮抗していましたが、先ほど説明した2つの理由からトランプ大統領の支持率が低下した後は、バイデン前副大統領の当選確率がトランプ大統領の再選確率を上回っています。
つまり、トランプ大統領が落選することを予想する米国民の方が多いということをオッズ倍率から読み取れます。
もちろん、今後トランプ大統領の当選確率が再度上昇する可能性も否定できませんが、現時点では不利な状況に置かれているということは認識しておきましょう。
市場に与える影響
もし、トランプ大統領が再選できなかった場合、金融市場に与える影響はどうなるのか、最後にこのことについて考えていきたいと思います。
トランプ大統領は株式市場に友好的な姿勢を示す大統領であることはよく知られており、現にトランプ大統領が当選を果たしてから株式市場は堅調な推移を続けてきました。
また、バイデン前副大統領が所属する民主党はオバマ前大統領が提唱していた「オバマケア」の様なヘルスケア政策を全面的に打ち出しており、株式市場に対してトランプ大統領ほど友好的ではないと考えられます。
つまり、
ということは認識しておく必要があると言えます。
新型コロナ&黒人デモへの政策の動向を注視
以上、トランプ大統領の支持率が低下している背景や大統領選挙の簡単な見通し、金融市場に与える影響まで簡潔に解説しました。
今後、新型コロナウイルスに対する政策や黒人デモへの対応がどのようになるのかは見通せませんが、大統領選挙の行方を占う重要な事象ですので、それらの動向には十分注意を払うようにしてください。(執筆者:日本証券アナリスト協会認定アナリスト 草山 拓也)