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外貨建て保険の相談が急増
新型コロナウィルスが世の中の環境を一転させる中で外貨建て保険の相談が一時期急増しました。
なおかつ今も増加傾向にあります。
要因として考えられるのは以下の3点です。

理由1:外出自粛により時間ができた
外出自粛により家族でともにいる時間も増え、今まで忙しくてできなかった将来の資産運用の話や保険の見直しの話が話題に出るようになりました。
理由2:社会保障への不安が高まった
新型コロナウィルスの対応に限らず、特別定額給付金や持続化給付金への対応など、制度として備わっていても全く行政の体制が整っていないことが明るみになり、国民の社会保障への不安も増幅しています。
理由3:リーマンショックと比較される
近年の資産運用セミナーで、「リーマンショックの時にコツコツと運用をやめずに継続したら資産は倍になっていたはず」として長期継続投資をおすすめする。
というように、リーマンショックを題材にして資産運用の有用性を説く金融関係者が多く存在しました。
そのような中、まさに今、そのリーマンショックと同じような状態が来たとして、資産運用のチャンスと考える人が増えてきています。
これらのことから、保険とリスクのある運用を兼ねた外貨建て保険に挑戦してみようというニーズが増え、実際に行動に移す人も一定数現れたからというのが実際のところでしょう。
資産運用を始めること自体は誤りではない
結論からいうと、資産運用を始めようとする判断は私は間違っていないと考えます。
しかし短期的な市場変化では外貨建て保険も含めて資産運用で得られるメリットはごくわずかです。
外貨建て保険の特徴
外貨建て保険のリスクとしては為替変動によって支払額が変わったり、保険金額が変わるというリスクがあります。
毎月100ドルの外貨建て保険に加入した場合の保険料
支払い保険料が毎月100ドルの外貨建て保険に加入をした場合、1ドル110円だったとすると保険料は円に換算すると月の保険料は
になります。
一方、1ドル100円だった場合は、
100ドル × 100円=1万円
になります。
為替においてはドルと円が100円 → 110円になれば円安になった。
110円 → 100円になれば円高になったとされるので、支払い保険料に関しては円高になった方が望ましいと言えます。
※保険料が固定になる商品もあります
支払い保険料に関しては円高になった方が有利です。
保険金か解約返戻金を1万ドル受取れることになった場合
では、外貨建て保険に加入をしていて、保険金または、解約返戻金を1万ドル受取れることになった場合。
1ドル110円だった場合は
が受取れます。
1ドル100円だった場合は、
1万ドル × 100円=100万円
が受取れます。
受取る段階になると今度は円安になっていた方が有利であることがお分かりいただけます。
外貨建て保険は基本は、支払うときは円高の方が有利、受取るときは円安の方が有利という二面性があります。
そう考えるとますますメリットデメリットは判断しにくくなります。
さらに保険金の部分については、いつ受け取れるかは予想ができません。
解約返戻金についても20年後、30年後に円がいくらになっているか予想することはどんなプロでも不可能です。

コロナ禍でのドル円相場はどうだったのか
実際に日本での新型コロナウィルス発生直前からのドルと円の為替の値動きを見てみると、2020年1月に日本で初めての感染者が確認されましたが、さほどの影響はなくドル円は2月の半ばまでは112円前半まで達しました。
2月中旬から北海道での感染者の急増が確認され、緊急事態宣言が発令されると、全て新型コロナウィルスの影響ではないにしても3月上旬にかけて101円台まで下落しました。
しかし2020年6月後半現在では107円台まで戻ってきています。
この後、第2派、第3派の可能性はありますが、少なくとも過去についていえば2月の短期的な底から見ると、6月で相場はたった4か月で回復傾向になっています。
未曽有の事態と言われながら、これだけの値動きであったことをチャンスととらえるかは人それぞれですが「すぐに購入しなければ」という大チャンスでもなかったのではないかと感じます。
外貨建て保険の本来の機能を確認しましょう
外貨建て保険は、円から外貨に換える時に手数料がかかります。
また、毎月の為替変動を嫌う人は保険期間中の保険料をまとめて支払う一時払いを選択する方法もあります。
解約返戻金に関してはすぐに受取らずに、為替が有利な状況になるまで保有するという方法もありますし、保険金に関しても据え置きができる保険会社もあります。
本来の保険の機能に重点を
外貨建て保険の優れている点は、「保障と資産運用を併せ持った機能」です。
しかし、いつの間にか為替や経済情勢をきっかけに、選択をする際の判断基準が、悪いいい方をすれば「今ならお得か、 お得でないか」に傾いてしまいがちです。
一時的な値動きではなく、為替手数料や、為替変動リスクを抑えるために
保険金を据え置くことができるのかなど
本来の保険の機能に重点をおくことです。
そして最終的に、商品も、担当する保険営業も末長いお付き合いができるかも含めて検討をしていきましょう。(執筆者:CFP 金子 賢司)